パリのバリアフリー事情(9)大切なのは「心のバリアフリー」

2017.02.12

これまで数回に渡りお伝えしてきたこのシリーズも最終回です。前回のFrancisさんのコメントより、フランスは施設のバリアフリー途上国ということが見えてきました。しかし、それがすなわち障害者への配慮がないということに繋がるのでしょうか。

 

当たり前のように手伝う

Francisさんは言います。「もちろん施設のバリアフリー化は大事です。しかし一番重要なのは『人々の心のバリアフリー化』ではないでしょうか。目の前に助けが必要な人がいれば手を差し伸べる。席を譲る。声をかける。それを特別なことではなく普通に行える。それこそが一番大切だと思います」。

フランスでは、見ず知らずの人でも視覚障害の人の手をひいて改札口まで一緒に行ったり、メトロの階段でプセット(une poussette ベビーカー)を一緒に運んだり。車いすの人がいればさっと道を譲ったり…という光景を頻繁に目にします。

僕自身もよく手伝いますが、それがあまりに日常の生活の一部になっているので「いいことをした」という感覚は特にありません。「当たり前のことをしているだけ」です。

 

進んでいる社会進出や権利保障

障害を持った人の社会進出が非常に進んでいることや、権利が手厚く保障されているのも特徴です。

街なかにあるプラス・ハンディキャペ(des places handicapées 障害者用駐車場、障害者用スペース)。障害者用駐車カード(carte de stationnement )があれば無料です。

違法に駐車している場合は、警察や取締係員から罰金を科せられます。障害者カードを持っていない場合は、通報されるか商業施設の責任者によって別の場所への移動を命じられます。「お客様の善意」に頼るのではなく、制度としてきっちりと決まっているのが特徴です。

障害者が無料で利用できる物はほかに、美術館や博物館などがあります。本人はもちろん介助者も、並ぶことなく優先的に無料で入場することができます。

 

「障害」か「障がい」か…よりも大事なこと

Francis さんの Carte de stationnement

今回、Francisさんの意向で「障がい」ではなくあえて「障害」と表記しています。それは「表面的な表現ばかりを『バリアフリー化』するよりも、肝心なのは目の前の人が助けを必要としていれば手を差し伸べること。それが本当のバリアフリーだ」という思いからです。

「車いすの人がいれば、『あ、足が不自由なんだな』と思って当然。足が不自由だから、歩行困難だから車いすを使っているのです。もしそこで彼が困っていれば、どうぞ手を差し伸べてください。なぜなら彼や私は今『助けを必要としている』のですから」

障害者との距離が近いフランス

フランスに来て感じたのは、障害を持った人とそうでない人の距離が非常に近い、ということです。近いというよりも「意識することがないほど普通」と書いたほうがしっくりきます。

我々がdes personnes handicapés (障害者)と言うとき、そこにはまったくペジョラティフ(péjoratif  軽蔑的な)な意味合いは含まれていません。注)なかにはそう言われることを嫌がる人もいるし、別の言い方に変えようとする動きもあります。

「障害を持っているのは仕方がない。それを『障害者』と言って何がいけない」とFrancisさんは続けます。「形ばかりにこだわって本当のバリアフリーを見失ってしまうのは、全く意味がないのではないでしょうか」。

フランスでは施設のバリアフリーが遅れている代わりに、心のバリアフリーで支えあっている。そのような印象を僕は受けています。たくさんの不便があっても、それをみんなの「手」で補う。それも素敵なことだとおもいませんか?

執筆 Daisuke
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