パリのバリアフリー事情(1)「車椅子での移動」を検証する

2017.02.04

今回はパリのバリアフリー化les adaptations pour les handicapés ) の状況についてお伝えします。一口にバリアフリーといっても、障害の種類によって取り除くべきバリアは変わってきます。今回は「車いす利用者」「移動」に焦点を絞って見ていきましょう。

 

友人に協力してもらいました

それでは検証開始です。2名の友人に協力をお願いして「自宅からパリへ行ってデパートで買い物をした後、モンマルトルの上のサクレクール寺院を見て帰ってくる」という、それほど難しくもなさそうなミッションに挑戦してもらいました。

電動車いすに乗っているのがFrancis さん(54歳)。重度のLa sclérose en plaques(多発性硬化症)で、視力や筋力が急激に衰えたり、体のあちこちに焼けるような痛みが走ったりします。

杖なしでは数歩程度しか歩けず、また杖を使っても10mほどしか歩けませんが、スポーツジムに通うなど元気に活動されています。外出する際はこの電動車いすが彼の足となります。

そして後ろに立っているのがパートナーのLionelさん(53歳)。僕たちが出発したのが午後4時半。まだまだ太陽は高く元気です。無理やりガッツポーズをとってもらいました。さて、どうなりますか…では、On y va!

 

電車でパリへ行って、買い物と観光

今回のミッションを詳しくお話ししましょう。

自宅のあるシャトゥ市(Chatou)
RERRéseaux Express Régional 首都圏高速鉄道網)
⇒パリ、目的地のデパートBHVで買い物
⇒公共交通機関(メトロ《le métro 地下鉄》・バス)を利用してモンマルトルの頂上にあるサクレクール寺院(Basilique du Sacré-Cœur
⇒公共交通機関を利用
⇒自宅

というもの。「郊外のホテルに宿泊してパリで買い物をしてモンマルトルを観光する」という設定です。

注)今回、Francis さんの意向で「障がい」ではなく敢えて「障害」という表記をしています。

 

アンバランスな歩道のバリアフリー

自宅近くの歩行者用地下通路。車いす(une chaise roulante, un fauteuil roulant )やプセット(une poussette ベビーカー )などのためにスロープが設けられています。

スロープの下半分の色が変わっている部分は、以前はスロープが途中で切れて大きな段差があった箇所です。「車いすが利用できない」と市に要請があって補修されました。

少しの段差であっても…

ほんの少しの段差であっても、車いす利用者にとっては大きな段差となります。

スロープは片方の歩道だけ

片方の歩道はスロープになのに対し、横断歩道を渡ったもう片方がスロープになっていないため、歩道に上がれません。いたるところにこのようなアンバランスなバリアフリー対策がされていることがわか ります。

 

切符を買い駅ホームへ

最新の券売機でチケットを購入。車いす利用者でも利用しやすい高さに設定されています。すべてタクティル(tactile タッチパネル式の)になっているので、視覚障害者の利用は想定されていません。視覚障害者は窓口で購入するか、周りの人に手伝ってもらって購入します。

専用の改札を使いホームへ向かいます。この扉は両側から利用できるのですが、チケットを通した人と反対側へ開くので、扉ギリギリの場所で待つことができます。

車いす利用者専用ではなく、大きな荷物を持った人やベビーカー、自転車の人も利用できます。ただし車いす利用者は最優先で利用できます。

職員さんが案内

エレベーターを乗継ぎ…おや?突然現れたこの人はいったい誰でしょうか? この人はRATPRégie autonome des transports parisiens パリ交通公団)の職員さん。普段は窓口にいますが、車いす利用者が来た時はこうやって一緒にホームまで案内してくれます(彼らは基本的にはエレベーターは利用せず、階段を使います)。

 

目的地を必ず聞く理由は?

その際、必ず最終目的地を聞かれます。なぜ行先を「必ず」聞くかというと「降りる駅を確認する」というほかに、もう一つ重要な理由があるからです。それは…

次号へ続く!

執筆 Daisuke
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