2025年11月25日(火)、北フランスリール(Lille)の学生が、ホームレスへの喜捨をカード払いできる仕組み「ソリー」(”Solly”)を開発、22日より同市内で運用が開始されました。これにより、ホームレスに配られたカードのQRコードをスキャンするだけで喜捨が可能になります。ソリーは、さらにこの仕組みを全国で運用するための資金8万ユーロ(約1,440万円/1ユーロ=約180円)を、クラウドファンディングで集めました。
「いま小銭持ち合わせてないから…」の言い訳は通用しなくなる?
フランスの都市部で多く見られるホームレス、フランス語でSDF(sans domicile fixe)と呼ばれる彼らに、メトロの中や道端で「小銭をくださいと」言われることもしばしばあります。
無視する人もいれば、小銭をあげる人、そして中には「小銭もってません」と答える人もいます。さらに最近は、特に若者の中にスマホにいれたカードや決済アプリ以外、お財布すらもっていない若者も増えました。
支払い方法のデジタル化で喜捨も激減
データがあるわけではありませんが、決済方法の現金離れが加速した今、ホームレスの受け取る喜捨は減る一方です。
そこに目をつけたリールの大学生 ティモテ・ドゥゲット(Thimoté Deguette)さんは喜捨アプリプロジェクトを立ち上げました。
このプロジェクトは、2024年の学生向け起業コンクール「アングレナージュ」(EngrainaGES)で優勝、スポンサーの支援を受けましたが、最終的にアプリではなく、カードとなって運用にこぎつけました。
ホームレスのQRコードをスキャン、お金は生活必需品などに
スマホを持っていないホームレスが受け取った喜捨を利用できるように、ポイントカードの形式が採用されました。
喜捨をする人は、カードのQRコードをスキャンし、個人情報と金額、カード番号を入力して決済します。最低金額は2ユーロ(約360円)、最高で100ユーロ(約18000円)まで寄付できます。
ソリーは、喜捨の金額から9%を、ホームレス支援団体、トワ・ア・モア(Toit à Moi)と「ラザール」(Lazare)に寄付、残りの額を各ホームレスのアカウントに付与します。
寄付した人には証明書が出され、他の団体への寄付と同じく、毎年行う確定申告で申告すれば、減税対象になります。
受け取り金の利用に制限あり
受け取ったお金は、何にでも使えるわけではありません。
このカードの利用は、食料品、衣料品、医薬品など生活必需品の購入、宿泊、医療機関、およびカルチャーなどに限られています。
リールの中心部、グランプラスにいたホームレスの夫婦は「今朝、非営利団体からこのカードをもらったけど、もう10人ぐらいに喜捨をもらった」と嬉しそうに話していました。中にはは50ユーロ(約9,000円)も渡した人がおり、すでに合計300ユーロ(約54,000円)ほど集まったようです。このお金で子供たちにクリスマスプレゼントを買う予定だといいます。
クラウドファンディングで資金調達、フランス12都市で試験運用
ソリーは次の段階として、リール市だけでなくボルドー(Bordeaux)、リヨン(Lyon)、ニース(Nice)、ストラスブール(Strasbourg)など12の都市での試験運用を予定しています。
2024年フランスで900人のホームレスが死亡
フランス全国で住居がない人は約35万人、うち2万人は路上生活者と言われています。
昨年は912人の路上生活者が死亡、最も若い人は生後数日の赤ちゃん、最高齢者は93歳でした。2023年の735人にくらべ、死者が大幅に増加した理由は、路上生活者の高齢化と住居がない人の増加にあります。
死亡者のうち、全国平均寿命より若くして亡くなった路上生活者の平均寿命は47,7歳、全国平均寿命より32歳も若くして亡くなっています。その82%は男性ですが、女性は13%、そして4%は15歳未満の子供でした。
子供の死者は、統計を取り始めた2012年から23年の間に2倍に増えています。
執筆:マダム・カトウ













