12月17日(火)、フランスの中小企業の間で、週休3日制をテスト導入する会社が増えています。コロナ禍で働き方に対する考え方に変化が生じたことが主な要因ですが、優秀な人材の採用が難しくなってきていることも原因の一つです。
「週4日労働」コロナを機に導入や検討に踏み切る企業
「同じ給与でより効率の良い仕事をし、労働時間を減らす」ことは長年労働者の夢であり、労働組合はそのために戦ってきました。近年、この考え方は経営者たちの間でも関心を集めていましたが、導入を真剣に検討する企業は稀でした。
そこに起こったコロナ禍で「テレワーク」や「時短」を強いられた結果、「労働」のやり方を見直す気運が高まり、単なる「夢」が「実現可能?」へと変化しています。
フランスの45歳以下の中小企業経営者から成る「若い経営者会」(Le Centre des jeunes dirigeants)が実施したアンケートによると、回答した2600人の経営者のうち半数が「週4日労働をテスト導入する用意がある」と答えています。
しかも、テスト導入をした全ての企業から「導入してよかった」という回答が寄せられています。
最も大切なのは「社員の幸福」
典型的な週休3日制は、金曜も休みにするパターンです。また週35時間から39時間の労働時間はほぼ変わらず、給料も変わらず維持されます。
経営者側の「メリット」について、導入済みの会社経営者は、ほぼ全員が口を揃えて「社員の幸福」を第一にあげます。続いて、「優秀な社員を採用することができる」という点があげられています。
ポストコロナで「自身の幸福」を最優先する傾向が強まり、採用難に陥る企業が増えています。そのためより魅力的な労働条件を提示する必要に迫られたことが背景にあげられます。
また、バーンアウトの増加も懸念され、経営者側が方向転換を強いられることになりました。
稼働日1日減、車通勤のガソリン代が節約に
新しい働き方の試みは、IT企業や若いスタートアップなどに限られているというイメージがメディアに溢れていますが、実はそうでもありません。
フランス北西部にある倉庫業者、JCロジスティック(JC Logistique)社は2019年、コロナ禍を待たずして、一部の業務に週4日労働を導入しています。
導入されたのは、シフト作りが最も困難な、商品搬入陳列係のチームですが、最初から全員が賛成だったわけではありません。
社長のレジーヌ・クルエ(Régine Crouet)氏は、「テスト導入に一番反対していた従業員」が、今では週4日勤務の「大ファン」になったと述べています。
この従業員は当初、頑として「週5日間労働」に執着していました。
しかし、導入してしばらくすると、他のスタッフ同様週休3日をエンジョイし、出勤日が1日減ることで通勤のガソリン代が1日分浮くため、経済的なメリットも感じる様になりました。
ちなみにこのチームは週39時間労働だったため、変更後の1日の労働時間は9〜10時間です。
社長業も週休3日に
このテスト導入の成功を機に、クルエ社長は2022年以降、他の部署への導入も考えています。
まず手始めに「私のポストを」というクルエ氏は、「私も金曜日を休みにして趣味をエンジョイしたい」と語っています。
週休3日の「一般化」は遠く
こういった「成功例」が数あるとはいえ、フランスで週休3日制が普及するのはまだまだ先のことになりそうです。
なぜかと言うと、労働者の大半は週5日労働に特に不満を感じておらず、大企業の最高責任者から成る、フランス最高経営者組合「フランス企業運動」(Mouvement des entreprises de France, 略:MEDEF)は「週4日労働」という提案自体を「一蹴」しているからです。
フランス中小企業連盟(Confédération Générale des Petites et Moyennes Entreprises,略:CPME)の代表で、自身も反対派の一人であるフランソワ・アセラン(François Asselin)氏によると、フランスのほとんど全ての中小企業では、週4日労働の導入は「不可能」だそうです。
また、「1日8時間労働より2時間も長い10時間労働はかなり辛い」ことから労働生産性を上げることは困難だと主張しています。
フランス人の4人に一人が週休3日を希望
世論調査会社、RH ADP社が2020年に1900人のフランス人労働者に対して行ったアンケートによると、21%の人が1日の労働時間を増やしてでも週休3日にしたいと答えています。
6%の人が「給料が減ってもいいから、労働時間を減らしたい」と答え、34%は「労働時間を増やして、給料を増やしたい」と答えています。
残り39%の回答者は現状に満足しています。
執筆:マダム・カトウ