モン・サン・ミッシェル(筆者撮影、2020年夏)
2024年5月14日(火)、フランスの祝日が多い5月、特に今年は飛び石連休が2回もあり、各地の観光地は多くのバカンス客でにぎわいました。フランスでパリに次ぎ最も観光客が多いモン・サン・ミッシェル( Mont-Saint-Michel)では、昨年に次ぎ今年もオーバーツーリズムが問題になり、地元では対策に知恵を絞っています。そんな中31日にはパリ五輪の聖火が通過、1日で5万人の観客が見込まれています。
5月の連休で1日3万人、狭い参道にあふれる人
フランス語で「メルヴェイユ(Merveille)」(驚異 、すばらしいもの)のあだ名を持つモン・サン・ミッシェル、たった4キロ平米の島に建てられた修道院、どこから見ても美しいこの世界遺産を一目見ようと、毎年フランス国内はもとより世界中から観光客が押し寄せてきます。
モン・サン・ミッシェルは、島の最も高い位置にある修道院を中心に、狭い石畳の参道が島を巡らせています。
引き潮の際は陸続きに見えますが、満ち潮の際は本来の姿である海に浮かぶ島になり、その美しさはさらに増します。
5月は気温も上がり暖かくなるだけでなく、1日のメーデーに続き、8日、9日と連休になったため、11日の日曜までに約10万人が島を訪れました。
そのため一般道よりも狭い参道には人があふれ、時には立ち止まることもできない状況になっていました。
夏休みだけで100万人、ピークシーズンを避けて
モン・サン・ミッシェル管理局長トマ・ヴェルテール(Thomas Velter)氏は、混雑緩和のため、最も混雑する7月、8月を避けるように呼びかけています。
夏の次に混む5月ですが、理由は、祝日が多いうえ、フランスの有給休暇の消化年度が6月1日~5月31日のため、5月末にあまった有給を駆け込み消化する人が非常に多いからです。
ピーク時間帯10時~15時を避けて
同氏はまた、ピーク時間帯の10時~15時を避け、早朝や夕方の方が人が少なくて来る方も楽しめると述べ、特に夕方は光線の具合でさらに美しく見える、と勧めています。
ところが、先週は朝の8時頃~10時が満潮ということで、早朝に出かけた人も多く、結局朝からおびただしい人で混雑していました。
島でガイドを務めるジュリー(Julie)さんは、「毎日朝早くから混雑して、身動きがとれない。夏が思いやられる。入場制限したほうがいいと思う」と話しています。
入場制限はしないのか?
メディアでオーバーツーリズム対策を聞かれたヴェルテール局長、「入場制限は考えていない」と答えています。その代わりパーキング料金をシーズンと時間帯で差をつけ、観光客の誘導を試みています。
今年の新料金では、シーズンを3つに分け、例えば閑散期の1月~2月、11月~12月は3時間以内で8ユーロ(約1,340円/1ユーロ=168円)、夏のピークシーズンは17ユーロ(約2,850円)と約2倍にして大きく差をつけています。
駐車スペースの数が入場制限に?
来訪者の98%は車で来るため、局長は「駐車スペースが5000台に限られていることで既に入場制限が行われている」と説明しています。
さらに同島の観光局は、パリの地下鉄や島に近い高速などに広告を出し「モンサンミッシェルは冬に訪れよう」キャンペーンを行い、その結果、今年の1月~3月のオフシーズンの訪問者数が12%増えています。
31日、パリ五輪聖火通過、聖火ランナーは宇宙飛行士のトマ・ペスケ
現在、フランス中を駆け巡る聖火、今月末にモン・サン・ミッシェルを通過します。
しかも聖火ランナーは、国民に大人気の宇宙飛行士で、地元ノルマンディー地方出身のトマ・ペスケ氏(Thomas Pesquet)ということで、普段の倍、4万人から5万人の観客が予想されます。
ただし走るのは陸と島を結ぶ桟橋のみで、修道院への参道には入りません。
モン・サン・ミッシェルの住民、たったの25人
2023年は年間で300万人が訪れたこの島に住んでいる人は年々減少、2022年の時点で、修道院の僧侶11人、島の管理局で働く公務員とその家族を除くと、ルブレック(Lebrec)夫妻の2人だけです。
ルブレック夫妻は古くからある同家の家に住み続けています。
それ以外の、レストランや店の従業員、アーチスト、ガイドなどは皆島外から通っています。
執筆:マダム・カトウ