フランスの食料品の値段、ようやく下がりはじめたワケ

2024.05.10

2024年5月10日(金)、ロシアのウクライナ侵攻から上がり始めたフランスの食料品価格は20%以上も上昇し、消費者の購買力は下がっています。少しでも安い店で買おうとする消費者の奪い合いになり、大手スーパーが激しい価格競争を繰り広げ、価格が下がり始めました。

 

値下げ月々1%未満、価格緩やかに減少、割安感はまだ

2年間で20%以上も上昇した食料品および日用品の価格は、過去9か月間にわたり毎月0.2%~0.6%ほど下落を続けています。直近では今年の4月、前月に比べ0.3%ほど価格が下がっています。

上昇したスピードに比べると値下げは微々たるもの、買い物客が「値下がりした」と感じるほどには至っていませんが、食料品価格が上昇傾向が下降に転じたことに大きな意義があります。

購買力低下で買い控え、一回の買い物での平均購入量が「大幅減」

価格が大幅に上がると、余計なものは買えなくなります。必要な量以上にまとめ買いするといったことも、よほど価格に魅力がなければ控えるのは当然のことでしょう。

 

食料品価格上昇の「小休止」

高騰を続けた価格がわずかながらも下降に転じたことを今後の傾向として断言する人はいないようです。

昨年春に、「今後食料品価格は全体的に下がる」と宣言し、大手スーパーに圧力をかけたフランス経済相ブリュノ・ル・メール(Bruno Le Maire)も、低買取額とEU規制にあえぐ農家の大規模デモからトーンダウンし、また、大手スーパーチェーン、食品業界も今後の動向に関しては慎重な姿勢を見せています。

直近数週間の平均価格下落は、洗剤など家庭衛生用品の価格が2.4%ほど下がったことが大きく寄与しています。

これは3月1日に食料品以外の生活用品の割引率上限を34%までとするデクロザイユ法(loi Descrozaille)が施行されたことが理由の一つに挙げられます。

これまで洗剤を「3本買うと半額」といった極端な割引が存在していましたが、同法の導入で一部できなくなりました。その結果、購入量が極端に減ったためメーカー側は定価自体を下げたのではないか、と消費データ分析のシルカナ社は(Circana)見ています。

食料品、日用品の価格上昇が顕著になり激しいインフレになったのは、2021年末の原油、エネルギー価格の高騰によるものであることから、昨年秋からみられる価格下落傾向は驚きに等しいといえます。

1月に行われた大手スーパーと大手メーカーの2024年度の価格交渉によると、今年も2~3%価格が上昇しているようですが、これがそのまま消費価格に反映されるとは限りません。中小メーカーとの交渉はまだ終わっていませんが、こちらは-1%~1%の間で推移するとみられています。

経済省や専門筋も今年の食料品、日用品の消費価格上昇は0から1%の間とみています。

 

値下げの裏に、熾烈な大手スーパーの「パイの奪いあい」

昨年、仕入れ価格の上昇をそのまま消費価格に転嫁したことで大手スーパーの売り上げは「人工的に」増え、購入量の減少分をカバーしていました。

ところが、今後も大幅な消費価格上昇が期待できない今、対策を講じる必要がでてきました。

フランス人の日用品消費額、初めて減少、パイが縮小

今年の4月、過去2年間で初めてフランスの食料・日用品消費額が0.9%減少しています。価格が上がっているにもかかわらず、消費額が減っている、つまりフランス人の購買力が大きく下がっていることがわかります。

こういった状況下では、大手スーパーチェンはいかに自社のマーケットシェアを増やすかに戦略を強化、顧客の奪い合いが激化しています。

フランスの大手スーパーチェーンで最大のシェアを持つのは、ル・クレールグループ(Leclerc)で23.5%を占めています。

同社は最安値を宣言しつつ商品数の多さを誇り、他の大手、カルフール(Carrefour)、オーシャン(Auchan)、インターマルシェ(Intermarché)、スーパーU(Super U)などがその動向を注視ししています。

最大手に対抗して、カルフール、オーシャンは自社ブランドを最安値にする戦略をとり、ハードディスカウンターのリドル(Lidl)は、「仕入れ価格の値上げを消費価格には転嫁しない」と宣言しています。

数サンチームの価格差が「命取り」に

この価格競争の熾烈さは、ルクレール社のコメントに表れています。

「価格競争に一瞬でも気を緩めたところが落ちていく。ある商品の値段を数サンチーム(1サンチーム=約2円/1ユーロ=165円)あげただけで、2週間もしないうちに客が他社に流れる」と説明しています。

パイが縮小し始め、価格競争が激化して消費者にとってはうれしい反面、大手スーパーチェーンも「不死身」ではありません。

カジノ(Casino)、フランプリ(Franprix)、モノプリ(Monoprix)と3つのスーパーチェーンを傘下に持つカジノグループは、カジノブランドのスーパーの大半を手放し、一部の店は閉店しています。

執筆:マダム・カトウ

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