パリ・オルセー美術館『ゴッホ最後の日々展』ヴァーチャルとの融合 ゴッホのアバターと会話も

2023.10.03

2023年10月3日(火)、本日よりオルセー美術館(musée d’Orsay)にて、画家ゴッホ(Vincent Van Gogh)が最後の70日間で描いた絵の特別展、『オヴェール=シュール=オワーズのヴァンゴッホ、最後の日々(仮題)(”Van Gogh à Auvers-sur-Oise, les derniers mois”)開催されています。(2024年2月4日迄)特別展では、ヴァーチャルリアリティーとAIの技術を駆使し、ゴッホのアバターと会話することができます。

 

最後の70日間で74点の作品

ヴァン・ゴッホは1890年5月20日、パリの北42km、車で1時間半ほどのオーヴェール=シュール=オワーズに移り住み、7月29日に37歳の若さで自殺するまでの最後の数ヶ月をこの地で過ごしました。

そして、このわずか2ヶ月あまりの間に74もの作品を残しています。

今回の特別展ではうち50点が初めて一堂に集められました。

展示作品の中には、フランス初公開となる、ゴッホ最後の作品『木の根と幹』(“Racines d’arbres”)や、自殺を図る数週間前に描かれた不吉な印象の名画『カラスのいる麦畑』”Champ de blé aux corbeaux”もあります。

 

来場者もバーチャルリアリティーで「ゴッホになってみる」

来場者がバーチャルリアリティーヘッドセットをつけると、まずドアを開けるように促され、食堂に通されます。

そこには、食卓を囲んでゴッホと彼の主治医で友人のドクターガシェ(Dr Gachet)が座っています。

テーブルの上に置いてある、高精度でデジタル化された画家のパレットがどんどん巨大になっていき、絵の具が厚塗りされた動く背景に変化していきます。

ドクターガシェの娘で、ゴッホの作品のモデルにもなっているマルグリット(Marguerite)の声に誘導されると、目の前に突然オーヴェール=シュール=オワーズ教会(église d’Auvers-sur-Oise)が現れます。

来場者が教会に触れたり、色の塊を手にとって混ぜたりすると、やがてそれは線や螺旋に変化していきます。こうやってゴッホ独特のテクニックを体験することができます。

 

「好きな色は?」「なぜ自殺したのですか?」、ゴッホのアバターの答えは?

ゴッホの好きだった作曲家フランツ・リスト(Franz Liszt)によるワグナーのオペラのピアノ・トランスクリプションを聴きながら、画家の最後の作品『木の根と幹』を鑑賞します。

地面の奥深くに下がっていく木の根は、メランコリー、死への強迫観念、一方で生を美化する衝動に駆られた、死の直前のゴッホの精神状態を表しているかのようです。

ゴッホはこの終焉の地にたどり着く前に、自ら耳を切り落とし、自殺未遂を繰り返しています。

このゴッホのアバターに「好きな色はなんですか?」と質問すると、オランダ語訛りのフランス語で、「黄色です」と間髪を入れず即答します。

なぜ自殺したかという質問には、「あなたたちは間違った情報を伝えられている」、「私は生きているのですよ」というトンチンカンな答えが返ってきます。

固有名詞が苦手なAI

さらに来場者が「オーヴェルニュ=シュール=メール」や「ドクター・ガシェ」といった、人名や地名などを質問に混ぜると、なかなか答えが返ってきません。

こういった単語は何度も何度もかなり大げさに発音してやっと通じるようです。

今回の展示のためにゴッホ・アバターを開発したフレンチテックのジャンボマナ(Jumbo Mana)社によると、このアバター、フランス語は理解するものの、固有名詞はまだ学習段階とのことで、同社は今回の特別展で多数の来場者が質問することによって逆にアバターが固有名詞をブラッシュアップすることを期待しています。

執筆:マダム・カトウ

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