フランス ルコルニュ新内閣、不信任を回避 年金改革は凍結へ

2025.10.17

2025年10月17日(金)、昨日、国民議会に極右RN党、極左LFI党より出された二つの内閣不信任案がいずれも否決され、ルコルニュ第二内閣が成立しました。事前の野党との協議で、社会党は年金改革の凍結を条件にし、ルコルニュ首相はこれを受け入れたことで再度の内閣解散を免れました。しかしながら、凍結によるさらなる赤字拡大となり、来年度予算の財源確保はいよいよ厳しいものとなります。

 

マクロン政権年金改革凍結で妥協、ルコルニュ第二内閣成立

極右極左の内閣不信任案成立へのカギを握る社会党は、首相との事前協議で「賛成票を投じない」条件として、2023年にボルヌ元首相が強行採択した年金受給開始年齢の64歳への引上げの凍結、および首相の強行採択権を行使しないことを条件として突き付けました。

膨大な財政赤字削減を抱えるフランス、その約半分を占める年金制度の改革は、マクロン大統領の公約で、その達成は同大統領のレガシーになるはずでした。

今回の凍結は、2027年の大統領選まで持ち越しというもので、改革は次期政権の方針にゆだねられる形となります。

 

年金改革凍結の代償、向こう2年間で184億ユーロ、約350万人が3か月前倒し受給

ルコルニュ首相が国民議会で行った演説によると、年金受給年齢の引き上げは2028年1月まで凍結されます。

2023年の年金改革では2030年までに、当時62歳だった受給開始年齢を段階的に64歳に引き上げるというものです。

引上げの対象になったのは1961年生まれの人からで、62歳3か月、62年生まれは62歳6か月と段階的に伸び、1968年生まれの人から64歳になるというものでした。

それに伴い、満額支給を受けるための掛け金の支払い年数も、42年間から43年間と1年延長されました。

凍結にかかる費用は、2026年で4億ユーロ(約700憶円)、2027年には180憶ユーロ(約3,152憶円)に上り、現在の赤字がさらに膨らみ、政府は埋め合わせのための財源を確保しなければなりません。

年金改革先延ばしも、現状維持は無理

対象になる人は約350万人です。年金受給開始年齢62歳の維持はいずれにしても不可能であるにもかかわらず、フランスの人口のわずか5パーセントがわずか3か月早く年金を受給するためにこんなにも膨大な費用が掛かるとして、伝統右派をはじめ経済専門家らから非難の声があがっていました。

一方では、議論の末の決議ではなく、強行採択により可決されたこの改革には、さらなる議論の上で不平等感を是正すべきとの意見も多くでていました。

いずれにしても、年金改革の行方は時期政権へと先送りされ、その間借金は増える一方です。

2026年、負債の返済だけで100億ユーロの資金調達増

フランスは2026年の市場における財源調達額、つまり国債発行額を、過去最高の3,100憶ユーロ(約54兆3,562円)と見込んでいます。この中には償還期日を迎える国債の返済及び利息が含まれています。

ちなみに今年の国債発行額は3,000憶ユーロ(約52兆5,870億円)でしたが、来年度に増額された100憶ユーロ(約1兆7,524億円)は、償還期日がくる国債が増えたにすぎません。

国内総生産(PIB)比で10.1%にも上るフランスの借金は、財政に重くのしかかっています。

 

まとまらない議会、強行採択なしで予算成立するか?

今後、来年度予算の審議が国民議会で行われますが、増税や歳出の削減をめぐってまとまらない可能性が大きく、可決への道は険しいとみられています。

ルコルニュ首相はその演説で「議論を優先する」と述べ、社会党の信任票を得るためのもう一つの条件、「首相の強行採択権を行使しない」を受け入れたため、来年度予算に関して大きく意見が分かれる中、予算案はさらなる妥協を強いられるのかが焦点となります。

そのため、内閣は成立したものの、議会解散リスクと背中合わせの状態が続くことが予想されます。

執筆;マダム・カトウ

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