フランスワイン業界 トランプ関税でも「米市場は捨てられない」

2025.08.29

2025年8月29日(金)、フランスのワインおよび蒸留酒の輸出全体の25%を占めるアメリカですが、トランプ関税15%の導入により、業界は苦境にさらされています。しかしながら、このかけがえのない巨大市場、簡単にあきらめるわけにもいかないのが現状です。

 

EUのアメリカ向けワイン輸出の50%がフランス産

ワイン、蒸留酒の巨大市場アメリカ、2024年EU加盟国からの輸出額は実に80億ユーロ(約1兆3,730億円/1ユーロ=約172円)、ワイン単体は50憶ユーロ強(約8,580憶円)でした。

そのほぼ50%、ワインおよびシャンパン等の醸造酒で24億ユーロ(約4,118億円)、コニャック等の蒸留酒で15憶ユーロ(約2,575億円)をフランスからの輸出が占めています。

フランスから海外へ輸出されるワイン、蒸留酒の25%がアメリカ向けとなっています。

米関税、昨年の4倍

2024年までわずか3.5%だった酒類向け関税は、今年1月にいきなり13.5%と跳ね上がり、現在15%となっています。

 

アメリカのワイン・シャンパン市場、日本や中国より「安定」が魅力

シャンパンの場合、アメリカ市場は輸出量の10%、金額にして8億2000万ユーロ(約1,408億円)を占めていますが、業界関係者は同市場を他の地域向けにシフトすることは「困難」との見解を述べています。

フランスワイン最大の産地、ボルドー地方でもアメリカ向けは輸出量全体の20%、生産量全体の10%を占めています。

過去12カ月で3000万本、額にして4憶300万ユーロ(約738憶円)のアメリカはボルドー最大の輸出先国であり、これだけのボリュームの輸出先はほかにはないのが実情です。

ボルドーワイン業委員会CIVB(Conseil interprofessionnel du vin de Bordeaux)の広報、クリストフ・シャトー(Christophe Chateau)氏は、「15%の高関税という悪条件で今後のビジネスの見通しが悪くとも、中国、日本、アフリカ、東南アジアなど他のどの市場に比べ最も安定した市場だ」と断言しています。

特にインフレによる経済危機に陥っている現在、どこを見ても有望な市場は見当たらないというのが実情です。

ボルドーワイン輸出、日本もダメ、中国もダメ、ヨーロッパもダメ

ワイン・蒸留酒輸出業連盟(Fédération des exportateurs français de vins et spiritueux : FEVS)の元代表、フィリップ・カステジャ(Philippe Castéja)氏も、日本市場は円安で停滞しており、中国市場は大口顧客だった公官庁主催の宴会でワインや蒸留酒の提供が禁止されたことから減速、欧州、特にフランス市場は経済の全体的な停滞にさらされており、「どこを見ても八方ふさがりの状況だ」と述べています。

 

アメリカのワイン市場、カテゴリーに関係なく「大量消費」

最高級ワイン「グラン・クリュ」(grands crus)だけでなく、様々なカテゴリーのワインが売れる、と語るのはボルドー地方、シャトーティウレー(château Thieuley)のワイン生産者、シルヴィー・クルセル(Sylvie Courselle)氏です。

主に中級程度のワインを、ニューヨークやワシントンを中心に、イリノイ州、テネシー州、テキサス州などに、全体の20%を輸出しています。

アメリカは非常に重要な輸出先ではあるものの、1か国に依存しないよう、イギリス、日本、スイスなど他市場の割合が60%を占めています。新規開拓も行っており、現在インドネシアやインド、デンマークやノルウェーといった国へも参入しています。

しかしながら、ワインの消費量も停滞しており、すべての市場において新規顧客の獲得はかなり難しい状況だと言います。

止まったアメリカ市場、関税額15%に「確定」で動き

クルセル氏は今年予定していたアメリカ出張をキャンセルしましたが、同市場をあきらめたわけではありません。年初の関税引き上げで、アメリカからのオーダーの多くがキャンセルされましたが、ここ数日、再び注文が入ってきています。

関税率が確定したことから、「見通しが立ったためだ」と同氏は見ています。また、今後税率が「良い方向に」動く可能性もゼロではないと同氏は期待しています。

 

最終的にはアメリカの消費者が払う「トランプ関税」

大事なアメリカ市場とはいえ、15%の関税をフランスの生産者や輸出業者が飲み込むのは「不可能」だとクルセル氏は述べています。

現在9ドル90セント(約1,398円)で販売されているワインは、トランプ関税の影響で「14ドル(約2,060円/1ドル=約147円)~15ドル(約2,200円)になる」とカステジャ氏も述べています。

つまり、15%の関税は末端消費者が負担することになります。

価格帯が大幅に上がることは、ワインのカテゴリーも上がることになり、消費者動向への影響は避けられない模様です。

執筆:マダム・カトウ

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