2025年3月11日(火)、パリ~ロンドン間を走る唯一の列車として知られるユーロスター、開業から30年がたった今、ヴァージンアトランティック航空で知られるイギリスのヴァージングループ(Virgin Group)が参入に名乗りを上げています。実現すれば競争が生まれ料金が下がるのではないかと期待されます。
ユーロスター、競争にさらされる時がきた
「パリ~ロンドン間は成熟した路線でそろそろ変化すべき。他社参入によりいい意味で競争にさらされる時がきた」
ヴァージングループは、創設者で実業界の大物リチャード・ブランソン氏を交えた記者会見で、2029年までに7億ポンド(約13兆3,555万円/1ポンド=約190円)を調達し、ユーロスターが独占するこの路線へ参入すると発表しました。
1997年~2019年の間イギリスで鉄道事業を行った同社は、「現時点では運行サービス開始を保証するものではない」と確約には慎重な姿勢を示した上で、現在このプロジェクトに投資するパートナーを探しており(パリ~ロンドン間の)運行開始を目指してプロジェクトが進行していることを明らかにしました。
「おいしい」路線への新規参入、他にも複数企業が意欲
ヴァージングループは自己資本300億ポンド(約5兆7,230億円)を投じ、400億ポンド(約7兆6,325億円)を借り入れなどで調達する計画を進めていますが、ユーロスターが独占するこの路線への参入には、スペインのエボリン(Evolyn)社やオランダのHeuro社も高い関心を示しています。
ユーロスター、24年過去最高の乗客数
パリ~ロンドン間を中心に、ベルギー、オランダとロンドンを結ぶユーロスターは、昨年過去最高にあたる1,950万人もの乗客数を記録しています。
ヴァージングループの「参入宣言」に対し、ユーロスター側は「欧州の鉄道の発展は喜ばしいことです。なぜなら、それが環境、社会、人々の移動に貢献するからです」と歓迎の意を示しました。そのうえで、「我々はすでに競争に立ち向かう準備はできている」と応戦し、現在すでに航空、バス、フェリーとの激しい競争にさらされていることを強調しました。
パリ~ロンドン間「おびただしい」需要、価格は高止まり
トンネルの運営を担うゲットリンク(Getlink)社のジェネラルマネジャー、ヤン・レーリシュ(Yann Leriche)氏は、「需要は過剰気味、パリ~ロンドン間はもっと運行を増やすべき」と述べています。
高い需要で、現在繁忙期の最高値が片道350ユーロ(約56,000円/1ユーロ=約160円)と非常に高いユーロスター、利用者にはライバル登場による値下げやサービス向上への期待が膨らみます。
「コスパ」で欧州最下位のユーロスター
非営利団体、『交通と環境』(Transport and Environment (T&E)が昨年、欧州27社の鉄道会社の評価ランキングを発表したところ、ユーロスターは最下位でした。
評価は大まかに8項目に分かれ、価格、発着時間の正確さ、割引料金の種類、顧客満足度、遅延時の返金、さらに同団体が環境への貢献を重視することから「自転車置き場」の有無や夜行列車があるかなどが評価の対象になっています。
ユーロスターの評価が低い要因として、価格の高さ、および費用対効果の低さが挙げられています。つまり価格が高いわりに遅延が多い、顧客満足度が低いといった「コスパの悪さ」が浮き彫りになっています。
今度はホント?、出ては消える新規参入話、ヴァージンに期待
パリ~ロンドン線への「参入宣言」、実はこれが初めてではありません。これまでも何度となく「出ては立ち消え」を繰り返しているのです。
そのため「今度こそ実現を」と、ヴァージングループに大きな期待が寄せられます。
執筆:マダム・カトウ