2025年3月14日(金)、EUからアメリカに輸入される酒類に200%の関税をかける、というトランプ大統の発言に対しフランスのワイン生産者や輸出業者に動揺が広がっています。フランス政府は同氏の「脅迫」には屈しない方針を明らかにしています。
エスカレートする米欧関税の応酬
日替わりで関税をかけたり引っ込めたりと、世界経済を振り回すトランプ大統領の発言にEUも例外ではありません。
そもそも同大統領がEUからの鉄鋼やアルミニウムに25%の関税を上乗せするとの発表を受け、EUフォン・デア・ライエン委員長がアメリカ産のバーボンに50%の関税をかけると発表しました。
これに対し、トランプ大統領は欧州産のワインやシャンパン、コニャック、ウイスキーなどに200%の関税をかけるとの報復措置を発表しました。
鉄鋼の報復に、ワインやウイスキーををだすのはやめて!
フランスのワイン、蒸留酒輸出業者同盟(FEVS)の代表、二コラ・オザナム(Nicolas Ozanam)はため息交じりで「(ワインやシャンパンなど)フランスを代表するものとして、我々の業界はなにかと関係ない分野の報復措置の犠牲にされています」と述べ、EU委員会に対し「現実的で冷静な判断」を求めています。
欧州酒類業界は、北米産のバーボンへの追加関税など望んでいません。
欧州の酒類業界のロビー活動を行う団体、スピリットヨーロッパ(SpiritEurope)も、「アメリカ側もヨーロッパ側も、関係ない業界(鉄鋼)の関税問題に我々酒業界を巻き込むのはやめてほしい」と深い懸念を表明しました。
沈黙のシャンパン業界、パニックするコニャック生産者
ワイン同様なにかと報復措置に使われるシャンパンですが、今回のトランプ関税にかんして今のところ業界連盟からの声明は発表されていません。
一方、国内でのアルコール、特にハードリカーの消費量減で中国への輸出依存度が高いコニャック業界は、すでに中国でのアルコール消費の落ち込みによりすでに苦戦しています。
中国とEUとの通商に関する緊張が続くなか、アメリカの追加関税はコニャック生産者に「とどめを刺す」と言われています。
コニャック生産量の98%が輸出、1位はアメリカ
コニャック業界連盟 (BNIC)によると、生産されたコニャックのほとんどが輸出されており、一位のアメリカのシェアは38%、2位の中国の25%を大きく上回っています。
業界はすでに昨年冬の中国との通商問題で追加関税の対象になっており、「関係ない業界との報復措置応酬の犠牲になっている」と嘆いています。
フランスの酒類全体の10%がアメリカへ輸出
国際貿易センター(Centre du commerce international :ITC)によると、2024年のEUからアメリカへの酒類の輸出は107億ドル(約1兆3,939億円/1ドル=149円)でした。そのうちフランスからの輸出は48憶ドル(約7,150億円)と生産量全体の10%がアメリカ向けということになります。
現在、フランスワインへのアメリカの関税は、1リットル当たり10セント(約16円/1ユーロ=160円)と非常に低い税率になっています。
コニャックなどの蒸留酒は、1997年の協定で税率はゼロと非課税になっています。
フランス政府は業界への全面的な支援を表明し、ベル―首相は「脅迫」には屈しないとの姿勢を示しています。
スペイン農相、プラナス氏はXに投稿し「ころころ変わる発言に惑わされず、冷静にわれわれの立場を崩さない」と表明しています。
欧州産のチーズなども対象になる可能性があり、欧州としてはエスカレートしての報復合戦は避けたいところです。
執筆:マダム・カトウ