2024年6月14日(金)、パリ五輪の開会式を12日後に控える7月14日の革命記念日、日本では「パリ祭」とよばれるこの日、シャンゼリゼ大通り(avenue Champs-Elysées)からコンコルド広場まで行われる恒例の軍事パレードは、お隣のフォッシュ通り(avenue Foch)で開催されます。
今年のパレード、パリ解放80周年とパリ五輪がテーマに
パリ五輪の開会式が市中開催のため、シャンゼリゼ大通りもコンコルド広場も6月からすでに交通規制が始まり、開会式会場の設営が行われています。
その影響で、今年の軍事パレードは凱旋門から放射線状に走る大通りの一つ、フォッシュ通りで開催されます。
パリ軍事総督(Gouverneur militaire de Paris)クリストフ・アバッド(Christophe Abad)将軍の発表によると、今年のパレードは例年よりも規模が縮小され、フランス解放80周年とパリ五輪にフォーカスしたユニークなものになります。
馬に乗って聖火リレー
例年なら、騎兵隊の馬の蹄がシャンゼリゼ大通りの石畳に響き、陸軍部隊や士官学校の学生が軍楽隊の演奏のもと凱旋門からコンコルド広場に向かって行進、外人部隊は独特の軍歌を歌いながらゆっくりと登場、最後に戦車や装甲車、消防車などが世界一美しい大通りの並木の間を通ります。
今年はオリンピックを象徴し、聖火リレーが騎乗で行われます。
最初に聖火を持って登場するのは、リオ五輪の金メダリスト、フランス騎兵特殊部隊のチボー・ヴァレット(Thibault Vallette)大佐、その後聖火リレーは国会議事堂へと向かいます。
フォッシュ大通りでのパレード開催、実は2度目
軍事省保管の資料によると、革命記念日の軍事パレードが最初にフォッシュ大通りで開催されたのは、なんと1918年で、現在のように凱旋門からスタートするのではなく、逆に凱旋門へむかって行進していました。しかも、大通りの一部でしか行進しなかったようです。
ノルマンディー上陸作戦、フランス解放80周年記念、参加31か国
今年の記念パレードにはフランス解放に寄与した実に31か国が参加します。
1944年の8月のパリ解放といえば、その約2か月前のノルマンディー上陸作戦を行ったアメリカ軍やイギリス軍が思い浮かびます。その後パリに戦車やジープで入場したアメリカ軍の兵士がパリ市民に歓迎される姿は、映画でもおなじみの光景です。
英米だけでない、フランス解放の同胞たち
実は、パリおよびフランスの解放は西側諸国14か国だけでなく、アルジェリア、モロッコ、チュニジア、セネガル、チャド、ジブチなど、アフリカの17国が参加し、これらの国々の多くの兵士の犠牲のもとに実現されました。
パレードでは、チャド行進連隊(régiment de marche du Tchad)、1942年イギリスで作られたキーファー特殊部隊の海兵隊員 (fusiliers marins du commando Kieffer)、爆撃部隊ロレーヌ(groupe de bombardement Lorraine)など、「フランス解放の同胞」(Compagnon de la Libération)の階級に昇格した当時の軍事部隊に脚光をあびせます。
また「フランス解放」を象徴し、当時解放軍に利用された乗り物4台が登場します。
戦車なし、最小限の軍装備、行進人数30%減
7月14日は、毎年多数の軍用機がパリの空を飛ぶため、パリ市民は祝日だというのにその爆音で目が覚め、窓際に走ってなんとか一目見ようとしたり、あきらめてテレビでパレードを見ます。
今年は戦車や装甲車はなしと軍用装備は最小限におさえられ、ヘリコプター22機、軽飛行機6機のみが登場します。
フォッシュ通りはシャンゼリゼ大通りよりも狭く、距離も短いため、今回の総参加人数も通常の3割減の4,000人余りに規模が縮小されています。
極右台頭のフランス、新内閣の今年のパレードに注目
イギリス、アメリカ空軍機が2機ずつシャンゼリゼ大通りの上空を飛んだのち、天候がよければ、パレードは恒例のフランス空軍アクロバットチーム、「パトルイユ・ド・フランス」(Patrouille de France)で締めくくられます。
「平和あってのオリンピック」と「戦争」、対局にある2つの出来事を象徴する今年のパレードですが、その直前の7月7日には、極右政党が優勢とみられるの国民議会選挙の決選投票が行われます。
フランス第五政初の極右の首相が誕生した場合、どういう雰囲気の中で行われるのか注目されます。
執筆:マダム・カトウ