2025年12月19日(金)、今年もクリスマスまで1週間を切り、明日は最後の土曜日です。クリスマスプレゼントの購入はフランスの商店の売り上げの半分近くを占めるという一大イベントですが、オンラインショッピングの普及で、以前にくらべれば買い物はずいぶん楽になったはずです。にもかかわらず、今年もラストミニッツのショッピングにでかける人で、週末は大混雑が予想されます。
社会的プレッシャー?クリスマスプレゼント選び
フランスでも24日のクリスマスイブは、家族が一同に集まってディナーを食べ、プレゼント交換をするのが恒例です。通常、このディナーに集まる人の全員分のプレゼントを各自が用意します。
親子だけの核家族であれば、親が子供のプレゼントを買うだけですが、おじいちゃん、おばあちゃん、兄弟姉妹とその配偶者やパートナーとその子供、親戚のおじさん、おばさんやいとこが集まる場合、これら全員分のプレゼントを購入することになります。
毎年一家庭で数十個のクリスマスプレゼント
例えば、クリスマスディナーに家族や親戚10人で集まるすると、10人がそれぞれ、もしくは夫婦単位でプレゼントを人数分用意します。つまり、この一家族だけで実に50~80個のプレゼントが用意されるわけです。
プレゼントの購入の負担軽減のため、家によっては、大人同士のプレゼント交換をやめたり、大人はくじ引きをしてプレゼントを買う人を一人だけに絞るなど、ルールを決めているところもありますが、それでも毎年プレゼント購入には膨大な費用と労力がかかります。
クリスマス前の最終土曜、混雑ピーク
ネットショッピングの普及で、12月に入ると、オンライン購入した商品の引き渡し所の前には大行列ができています。一部では3時間待ちとなるなどで、テレビのニュースでも取り上げられています。
近年、11月後半のブラックフライデーを利用して、より安くプレゼントを購入する堅実な消費者も増えています。
にもかかわらず、毎年ぎりぎりに商店に駆け込む人が絶えないのはなぜでしょうか?
毎年、来年こそは早めにプレゼントを用意すると誓うが…
そもそも毎年のことなので、プレゼントのアイデアもなかなか湧いてこないものです。しかも、おじいちゃんやおばあちゃん、めったに会わない親戚、特に義理の兄弟姉妹など、相手の嗜好をよく知らない場合、なにを買っていいかわからないものです。
プレゼント交換はちょっとした儀式、その場では皆がもらったプレゼントを喜んでいます。
ところが、実際はせっかく贈ったものを使っているかどうかもわからないし、「気に入らなかった」というフィードバックをもらうこともありません。かといって「毎年同じようなものではがっかりするかもしれない」ので、結論がでないまま結局ぎりぎりになってしまうのです。
こうして「先延ばし派」は直前の土曜日にリストを持って店を回ることになります。
エヴリー大学で消費行動の研究をするアニー・バニケマ=ソー(Annie Banikema-Sow)教授は、消費者が行動を起こせない心理を「社会的プレッシャーが強すぎることによる反動」と、説明しています。
直前購入が苦痛でも、早すぎると違う?
アントワーヌ(Antoine)さんは、毎年のクリスマスショッピングを「人混みがひどくて暑くて息苦しく、騒々しくて不愉快でストレスがたまる」と表現しています。こうした精神的かつ肉体的苦痛にもかかわらず、毎年クリスマス前の最後の土曜日に、ショッピングセンターでプレゼントを買うのです。
理由はというと、「早めに買ってしまうと、クリスマスプレゼントではなく、単なるプレゼントになってしまう」こと、そして何よりも「誰にどんなプレゼントを買ったらいいのかがわからない」からだといいます。
アントワーヌさんは、「これだ!」というひらめきが訪れるのを待って、あてもなく歩き回っているのです。
なぜ無難な贈り物が怖い?
バニケマ=ソー教授は、プレゼントが「相手に気に入られなかったらどうしよう」という恐怖感が、プレゼントを買いに行くという行動を先延ばしにする一番の要因となっている、と説明します。
プレゼントのアイデアは数年で一巡してしまい、同じ相手に毎年オリジナリティー溢れるプレゼントを探すのは困難だとわかっていながらも、ソフィーさんは「ありふれたものをあげると、その人に対して関心がないと思われてしまう」と、クリスマスプレゼントにまつわる心理を如実に表現しています。
クリスマス前の「熱気」を楽しむ人たちも
「ショッピングは嫌い」にもかかわらず、わざわざ混雑するクリスマス前にプレゼントを買いに行く人もいます。
「すごい混雑で不愉快だけど、買い物に来た集団が一丸となって発するエネルギーが好き」というマティス(Mathys)さん、「アメリカの映画みたい」というクリスマスショッピングの「熱気」を味わいに店に出かけます。
「パリに住んでいるから最終的にはプレゼントは全部買える」というビリー(Billie)さんも、最終土曜日にショッピングに出かける派です。この日はたいていいろんなハプニングも起こり、楽しい時間がすごせる、といいます。
日本はクリスマスよりお正月、おせち料理の準備などで大変ですが、少なくともプレゼント交換はなく、子供たちに現金を渡すだけの「お年玉」でよかったと思うのは筆者だけでしょうか?
執筆:マダム・カトウ













