フランス新首相に右派保守バルニエ氏、左派連合は猛反発のワケ

2024.09.06

2024年9月6日(金)、フランス国民議会選挙から実に50日以上が経過した9月5日、マクロン大統領は新首相に右派、共和党(Les Républicains : LR)ミッシェル・バルニエ氏を首相に任命しました。議会選で過半数を獲得した政党は不在、第一党にのし上がる勢いだった極右国民連合(Rassemblement National:RN)を抜いて最多の議席を獲得した左派連合、新人民戦線(Nouveau Front populaire:NFP)は大統領が民意を無視したと猛反発しています。

 

歴代最年少のアタル首相から、最年長、経験豊かなバルニエ氏に

国民議会選敗退で7月16日に辞任を表明した35歳のアタル首相は、同月26日から開催のパリ五輪に配慮し、閣僚ともどもいったん留任していましたが、昨日、73歳のミッシェル・バルニエ氏にようやくバトンタッチしました。

フランスサヴォア県出身、1978年、27歳で初当選し国民議会議員となったのち、サヴォア県知事、元老院(セナ)議員を経て1993年、保守中道のシラク政権の環境大臣として初入閣、外相を務めたのち、サルコジ政権下で農業大臣に就任しています。

ブレグジットのEU側交渉人、移民政策は強硬派

2010年~14年、バルニエ氏は欧州委員会で域内市場、サービス担当副委員長を務め、特に2016年~19年はブレグジットのEU側担当責任者として離脱条件の厳しい交渉を続けたことで、フランスおよびEU域内では知られています。

2021年、2022年の大統領選の共和党内候補者として立候補、バルニエ氏が当時掲げた政策は保守色が濃く、特に移民受け入れを3~5年間止め、家族呼び寄せや長期滞在ビザの条件見直し、不法滞在者へのビザ付与を厳格化する案などが含まれていました。

 

フランス首相、大統領に任命権、過半数政党不在で迷走

フランスでは、国民議会選で過半数を取った政党から首相を選出し、大統領は民意を反映した形で任命するのが通例となっています。

しかしながら、今年7月7日に決選投票が行われた選挙で過半数を取れた政党はなく、全577議席中、左派連合(NFP)が182議席(31.5%)、与党連合アンサンブル(Ensemble !)が168議席(29.1%)、国民連合(RN)が143議席(24.7%)と3党で分け合う形で終わりました。

マクロン大統領「不信任決議回避」を主張、「皇帝」、「独裁者」の批判も

過半数に満たないものの第一党となった新人民戦線は、首相候補に無名のパリ市若手幹部、ルシー・カステッツ(Lucie Castets)を推薦しましたが、マクロン大統領は「極右、右派の議席数から、議会で真っ先に内閣不信任案が決議される」と却下しています。

首相選びは、その3週間後に控えたパリ五輪を最優先としていったん中断され、終了後8月中旬から再開されました。

マクロン大統領は主要政党幹部との会合を続け、その後地方県知事や官僚も含め20人近くの首相候補名が上がりメディアで取り上げられましたが、大統領は首を縦にふらず、決定には至りませんでした。

わずか46議席、少数派の保守共和党が漁夫の利

だれを選出しても不信任決議リスクが高いと、一時はテクノクラート(官僚)による内閣も例外ではないとメディアで騒がれていました。

最終的にバルニエ氏の経験値と人脈に期待して選出された模様ですが、決定的な理由は、マクロン大統領の公約で国民の猛反発を食らった年金受給年齢の引き上げを同氏は支持しており、改革が後戻りする可能性がないことだと言われています。

さらに保守色の強いバルニエ氏であれば、第3党となった極右(RN)党の支持が得られやすいとの計算もあった可能性があります。

左派が勝利も首相は右派、民意を無視

これに対し、「年金改革を白紙に戻す」と公約した新人民戦線は、マクロン大統領が国民連合党の創設者、マリーヌ・ルペン氏との会合で秘密裏に合意したと批判、新首相を国民議会で承認しない意思を表明し、民意を無視した大統領の辞任を要求するため大規模デモを呼び掛けています。

今後バルニエ首相は、内閣を形成、議会の承認を経て、最初の仕事である2025年の予算案を遅くとも10月10日までに可決させなければなりません。

執筆:マダム・カトウ

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