ディズニーランド・パリで従業員スト、園内でデモ行進 明日3日も

2023.06.02

ディズニーランド・パリで従業員スト、園内でデモ行進 明日3日も

2023年6月2日(金)、パリ郊外のディズニーランド・パリ(Disneyland Paris)で5月30日(火)、一部従業員がストライキを行い、約1,000人が園内でデモ行進を行いました。フランスではインフレによる賃上げ要求が民間企業にも波及し、特に昨年の業績が良好だった同社では、従業員による労働条件改善への圧力が高まっています。ストは日増しに規模が拡大し、明日3日(土)も予定されています。同園によると、明日も通常営業されますが、パレードなどプログラムの一部が中止になるため、希望する顧客には日付変更や返金などで対応しています。

 

眠れる森の美女の城前、数百人がデモ行進

5月23日、ディズニーランド・パリの園内では、ミッキーや白雪姫のパレードが急遽キャンセルになり、その代わりにこの日ストライキ中の約500人の従業員が組合の旗などを振りながらデモ行進をしました。

1週間後の今週火曜日には、その数は1,000人に膨れ上がっています。

総従業員数17,000人、パリおよび近郊のイル=ド=フランス地域圏(Île-de-France)最大の雇用主であるディズニーランド・パリの従業員ストは極めて稀なことです。

 

会社都合の「超」フレキシブルなシフト、従業員に多大な負担

今回のストにおける組合側の第一の要求は、労働条件の改善です。

ディズニーランド・パリは2020年、従業員の就業日や時間について、運営の都合に合わせてシフトを組んだり、変更できる仕組みを導入しました。

この「超」フレキシブルなシフトにより、従業員は日替わりで労働時間、始業時間、終業時間が変わるうえに、たった2〜3時間のために通勤しなければならないといった不都合を強いられています。

その結果、「家庭生活や健康への悪影響を及ぼしている」と組合側は主張しています。

手取り月200ユーロの賃上げ要求

二つ目の要求は経済的なものですが、その一つとして月々手取り200ユーロ(約30,000円/1ユーロ=約150円)の賃上げ、

日曜日の時給の倍増を要求しています。

さらにガソリン代の高騰によりマイカー通勤者への交通費の倍増も必須条件として加えています。

これに対し会社側は5月27日に急遽行われた交渉で、「月125ユーロ(約18,750円)の賃上げと、給与1ヶ月分のボーナスを月割り支給する」と回答しています。

この回答では、賃上げ以外の要求は全て却下された形となったことから、ユーロディズニーの組合の一つ、全国自治組合連合(UNSA)の従業員代表アハメド・マスルール(Ahmed Masrour)氏は「全く話にならない」と強硬姿勢を崩していません。

 

2022年の売り上げ、過去最高の24億ユーロ

ディズニーランド・パリの昨年の売り上げは、24億ユーロ(約36兆円)と過去最高を記録し、営業利益も2400万ユーロ(約70億円)と好成績を残しています。

そのため会社側は、昨年企業の業績により支給される社員への利益分配(prime d’intéressement et participation)として500ユーロ(約75,000円)を2回支給、さらに給与係数の見直しを行った結果、従業員の約82%が9%の昇給の恩恵に預かったと主張しています。

組合側は、2022年の賃上げにより、本来であれば2020年〜21年にかけてのコロナ禍による閉園で減給になった分を取り戻すはずだったが、インフレでその分が帳消しになったため、今回の要求に至ったと説明しています。

マスルール従業員代表は、会社側のオファーは「社員をバカにしている」とコメントしています。

 

どうなる?この夏のユーロ・ディズニー

同社は今回のストの影響は「ごくわずか」で、園の運営には支障をきたしていないと発表しており、毎年年末に行われる年次交渉まで、組合側との話し合いのテーブルにつく気は今のところなさそうです。

一方、組合側は、ストの参加者が日々増えており、参加者の職種も警備員、ショップ店員、レストラン店員、倉庫係からエンターテイメント担当など多岐にわたっていることから、園内の様々な運営に支障をきたし、今後も交渉に応じない場合、今年の夏は「騒々しくなる」と宣言しています。

2022年の入場者、世界各地から1,500万人、「夢の国」のイメージダウン必須

ユーロディズニーはパリおよび近郊最大の観光地で、昨年実に1,500万人が入場しています。

夢を売る商売だけに、ストが長引くとこれから夏休みにかけてのハイシーズンの収益に多大な影響が出るのみならず、イメージダウンは免れません。

訪れる人は「非日常」を味わいに来るわけですが、「デモ行進」は見たくないものです。

執筆:マダム・カトウ

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