2023年5月30日(火)、今年もフレンチオープン(ローランギャロス:Roland Gallos)がパリ西部ポルト・ドートイユ(porte d’Auteuil)のスタジアムで開催されています。今年の大会が例年と違うのは、2005年の初出場から昨年まで、毎年参加していたラファエル・ナダル(Rafael Nadal)選手が怪我による棄権のため不在なことです。
ローランギャロスといえば「ナダル」、不在なのにあちこちに
フランス語でローラン・ギャロス(Roland-Garros)と呼ばれる全仏オープンに過去18年間毎年出場し、優勝14回、通算115試合のうち負けたのはたったの3回という驚異的な記録を持つナダル選手(36歳)は、今年19年ぶりに怪我のため棄権しています。
ところが、会場のいたるところに「ナダル」がいます。
まず正門から中に入るとナダルの銅像に歓迎され、さらにフィリップ・シャトリエ(Philippe-Chatrier)と呼ばれるセンターコート付近には、ナダルの顔だけをくり抜いた等身大の顔出しパネルが設置され、大人も子供も記念撮影をして楽しんでいます。
このセンターコートに昨日29日から「WE LOVE RAFA」と書いた旗が出現しています。
実はナダルのスポンサーであるテニスウエアブランド「Rafa Nadal」が配布したもので、多くの観客がこの旗を観客席で振っています。
世界中からナダルめがけて来たファンたち
メキシコ在住のスペイン人マリアさん夫妻は、地元アカプルコで開催された試合で、当時17歳だったナダルを初めて見ています。
その後別のトーナメントでも観戦、今年初めて念願の全仏オープンに来ることを決めましたが、ナダルの棄権を知った夫妻は「(全仏に)来るのが遅すぎた」と気を落としています。
航空券やホテルもキャンセルができなかったため、結局全仏観戦にパリまで来ることにしましたが、「ナダルのいないローランギャロス」はやはり味気ないようです。
やはり「ナダルの試合を観戦するため」に来たというカリフォルニア在住のリックさんは、(ナダルの)試合はすでにウインブルドンでもUSオープンでも見ていますが、「ローラン・ギャロスは彼のホームみたいなものだから」と今回の観戦旅行を手配しました。
欠場が決まった時は来るのを辞めようかと思ったリックさん、「ローラン・ギャロスの会場の雰囲気は格別なので、結局来ました」と話しています。
本人不在の穴埋め?ナダルのブランドショップにファン殺到
今年も例年通りローランギャロス・オフィシャルショップ内には先述の「Rafa Nadal」の店舗がオープンしていますが、
本人不在にも関わらず、ショップの売り上げは好調のようです。
ひっきりなしに商品を棚に並べる店員によると、客は後を絶たず、それどころか欠場で逆にショップに来る客足が増えているようです。
試合で本人を見ることができないから、試合の「ヴィジュアル的な」思い出の欠落を「モノで穴埋めしようしているのかもしれない」とこの店員は語っています。
ショップで息子にマグカップを購入したクリステル(Christelle) さんは、ローランギャロスは「彼のトーナメント」だから、「(ナダルが)欠場しようが引退しようが、彼のブランドや記念品を皆買い続けると思う」とコメントしています。
カルロス・アルカラス、ナダル不在でファンが応援?
全仏オープン王者不在の中、ナダルファンはどの選手を応援するかの質問に、皆「カルロス・アルカラス(Carlos Alcaraz)」と答えています。
ナダルの欠場をいち早く公表したスペインのオンラインスポーツ紙エル・レヴェロ(El Revelo)の記者ナチョ・エンカボ(Nacho Encabo)氏は、「ナダルファンは皆アルカラスを応援しており、もしナダルが出場していても応援してくれたと思う」と話しています。
ナダルが「RAFA」の愛称で呼ばれるように、アルカラスは「カルリトス(Carlitos)」の愛称で呼ばれています。
対フラヴィオ・コボリ戦に勝ったアルカラスにスタンディングオベーションが巻き起こっていますが、本人も試合後のインタビューで「応援してくれた人たちは全員ナダルファンだったかもしれませんが、気分良く試合ができた」と素直に喜んでいました。
ナダルの後継者?
エンカボ氏は、今年20歳になったばかりのアルカラスは、36歳のナダルの後継者として注目されており、こうしてスペインテニス界に世代の「空白」ができないことは良いことだとしつつも、王者不在による「盛り上がりの欠如」は否めないと語っています。
ナダル不在のローランギャロスで、世代交代による新しい「王者」が生まれるでしょうか?
6月11日の最終日まで目が離せません。
執筆:マダム・カトウ