パリ市債務77億ユーロ、イダルゴ市長の任期で倍増

2022.11.29

11月29日(火)、パリ市の債務はイダルゴ市長(Anne Hidalgo)が着任した2014年から倍増しています。2001年の時点で10億ユーロ(約1,432億円/1ユーロ=約143.22円)だった債務は、今年12月31日には77億5,000万ユーロ(約1兆1,110億円)にも上ると予測されています。フランス交通相クレモン・ボーヌ(Clément Beaune)氏は、イダルゴ市長の「浪費」を批判し、「国の管理下に置かれる可能性もある」と出演したテレビ番組で発言しています。

パリ市民一人当たり3,800ユーロの借金、8年前の倍

パリ市のホームページでは、同市の債務は年末には77億5,000万ユーロになるとの予測が公表されています。

1年前、2021年末の83億7,000万ユーロ(約1兆1,970億円)と比べるだけでは分かりにくいですが、イダルゴ市長が着任する前の2013年末の債務は37億1,000万ユーロ(約5,317億円)と現在の半分で、着任初年度末の債務は41億8,000万ユーロ(約5,992億円)でした。

パリ市民一人当たりで計算すると、2014年に1,640ユーロ(約235,000円)だった債務は、8年間で倍増し、実に3,800ユーロ(約544,000円)にものぼります。

パリ市は「劣等生」か?

フランス国内の人口5万人以上の他都市と比較すると、例えばパリ郊外のルヴァロア=ペレ市(Levallois-Perret)は2020年時点で住民一人当たりの債務がほぼ5,000ユーロ(約716,000円)にものぼっていました。

人口5万人以上、10万人以下の都市では、ミュールーズ(Mulhouse)アンティーブ(Antibes) アルル(Arles)が一人当たり2,000ユーロ(約286,000円)と、平均値1,399ユーロ(約20万円)を大幅に上回っています。

パリを除く人口10万人以上の都市の平均債務は1,142ユーロ(約16万3000円)で、パリ市の債務額の大きさがうかがえます。

大都市で比較してみると、債務が少ない都市では、人口50万人のリヨン(Lyon)でわずか725ユーロ(約104,000円)、ストラスブール(Strasbourg)で954ユーロ(約136,000円)、ナント(Nantes)758ユーロ(約108,000円)、オルレアン(Orléans)762ユーロ(約109,000円)となっています。

優等生は西フランス、ブレスト市

フランスで最も債務が少ない都市は、北西フランス、ブルターニュ地方にある人口14万人のブレスト(Brest)で、住民一人当たりの債務はわずか183ユーロ(約26,000円)になります。

各都市の財政をこれらの数字だけで判断するのは困難で、特に首都パリは市であるとともに県でもあるという特異性から、財政に関しても他都市と単純に比較することはできないと、地方会計監査室(Chambre régionale des Comptes)は指摘しています。

コロナで観光収入激減

パリ市はまた世界一の観光地でもあり、観光収入は市にとって重要な財源です。そのため2020年から2021年はコロナ禍で観光客数が激減したことが、市の財政に大きく影響しています。

 

パリ市、国の管理下におくべきか?の議論

フランス交通相のボーヌ氏は昨日出演したテレビ番組で、「パリ市を国の管理下におくことも辞さない」と発言し、議論を醸し出しています。

とはいえ、実際に遂行された例は多くありません。

例えば2009年、北フランスの人口26,000人の町、エナン=ボーモン(Hénin-Beaumont)の市長が公文書偽造、公費横領などの嫌疑で停職処分になり、国の管理下に置かれたケースがあります。

パリ市のような大都市で「国による管理」が施行された前例は、80年も前に遡ります。

南仏最大の都市マルセイユで、74人もの死者を出した火災に起因して、一時国の管理下に置かれました。

イダルゴ市長、固定資産税50%増に批判

パリ市は、前代未聞の債務膨張を打開すべく、2023年の固定資産税を現在の13.5%から20.5%、実に52%の大幅増税を発表しています。

増税の理由としてパリ市は「地球温暖化対策」や「今年の国内外の情勢による電気代の高騰、およびインフレ」を挙げたほか、他の大都市の固定資産税の平均値41.61%と比較し、パリ市の固定資産税がフランスで最も安いことを強調しています。

パリ市民の心、イダルゴ離れ?

ボーヌ交通相は、イダルゴ市長が2020年の大統領選挙に出馬したことに触れ「自らが市長を務める市ですら得票率が2%にも満たなかった」と指摘、またその時の公約で「増税しない」と言っていたにもかかわらずコソコソ増税するなど、「市長の膨大な浪費はなんの役に立っているのか?とパリ市民は心配している」と痛烈に批判しました。

執筆:マダム・カトウ

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