10月4日(火)、企業や商店の人手不足が深刻になる中、25歳以下の若者の失業率は上昇しています。若年層の就業支援に、昨年フランス政府の雇用センター「ポール・オンプロワ」(”Pôle emploi”)がSNSやTik Tok上で行った、25歳未満の若者向け就業支援キャンペーン#MissionEmploiは、1年間で8,800万回閲覧されています。この成果を受け、今年も政府は同様のキャンペーンを行います。
インフルエンサー「キャリア・クイーン」、「ママ・ジョブ」を登用
仏雇用センターは若者の雇用支援にTik Tokで人気のインフルエンサーを登用しています。
その中の一人、人事コンサルタントのカリーヌ・トリウリエ(Karine Trioullier)さんは、58万5000人のフォロワーがいる「キャリア・クイーン」(Career Queen)として、Tik Tok やYoutubeで若者向けに面白おかしい動画を通して就職のアドバイスを行っています。
トリウリエさんはもともとコロナ禍で将来の不安から、大人の就業や転職の相談を受けていましたが、徐々に子供が学業に身が入らない、学校を辞めてしまったという悩みを持つ親からの相談が増え、2021年にTik Tok上で「キャリア・クイーン」と言うキャラクターに扮して若者にターゲットを絞ったビデオの発信を開始しました。
「面接の結果どうなりましたか?」のメール、金曜日に送らない
履歴書の書き方や就職面接の受けかた、さらには給料交渉の仕方に至るまで、ユーモアを交えてわかりやすく説明しています。
例えば、面接を受けた後の結果の催促はいつ送ればいい?という質問には「7日経ってからしましょう」と回答した後、ただしメールは「金曜日の夕方には送っちゃダメよ」と注意しています。
理由は、月曜日に担当者が出社した時にそのメールは「受信トレイの一番下になってしまう」ため優先順位が下がるからですが、このような忙しいビジネスパーソンの「習性」を熟知したアドバイスもあります。
面接は「受付から始まる」
「ママジョブ」(MamaJob)として同じく若者向けの就職対策のビデオを発信する、マリアム・カンテ(Maryam KANTE)さんもTik TokやInstagramで60万人の若年層フォロワーがいます。
面接先の受付の人と、面接を受ける若者の両方に扮した「面接に臨む際の態度」という動画では、採用面接の最中に実は受付にいたのが「その会社の幹部の一人だった」ということが発覚します。
社会人の経験がない若者向けに具体的な例を出して、面接に行くときは「受付の人にも礼儀正しい態度を」というメッセージを伝えています。
そのほか、就業している人向けにも「会社を辞めるときに、会社側がもらうべき書類(注)」といった、初めての就職で何も知らない若者への注意事項も発信しています。
(注)フランスでは、雇用主は就業期間にかかわらず、就業したという証明書、最後の給与の支払い完了の書面、その後失業した場合に雇用センターに提出する書類などを渡す義務があります。
仏失業率、25歳以下の若年層だけ増加
今年の8月にフランス労働省が発表した失業者数は544万7000人でした。
過去1年間の25歳以上の失業率が下がる中、25歳以下の若者の失業率は2.2%上昇し、8700人増えています。
政府は、就業経験のない25歳以下の若者や、学業を断念したりバカロレア(高校卒業証明書)を取得していないなど学歴の低い若者に、補助金付きの職業訓練や地方自治体主導の職業斡旋の仕組みを充実させています。
こういった情報に疎い若者たちに、様々な就業支援が充実していることを周知させるためにも、フランス政府はマクロン大統領自身も含め、SNSによる発信を強化しています。
執筆:マダム・カトウ