7月29日(金)、フランス郵政公社「ラ・ポスト」(”La poste”)は、今年一杯で、普通郵便の翌日〜翌々日配達を廃止すると発表しました。普通郵便のうち、「プリオリテ(Prioritaire)」と呼ばれる優先配達の需要が約3分の1に激減、サービスの維持が困難になったことが原因ですが、2023年より普通郵便の配達日数は最低でも3日かかることになります。
普通郵便の赤字13億ユーロ、タンブル「ルージュ」廃止へ
ラ・ポストが長年提供してきたフランス国内郵便サービスのうち、14時までに投函すると24時間でフランス全国どこでも配達するサービス「プリオリテ」は廃止され、48時間で配達される「エコロジック(Écologique )」サービスは配達日数が1日長い3日後の配達に変更されます。
現在、プリオリテは料金1.43ユーロ(約195円/1ユーロ=約136円)の「タンブル・ルージュ」(”timbre rouge”=赤切手)と呼ばれる切手一枚で利用でき、「エコロジック」は料金1.16 ユーロ(約158円)の「タンブル・ヴェール」(”timbre vert”=緑切手)で利用することができます。
フランス郵便取扱量、10年余りで3分の1
メール利用などによるデジタル書面の普及に伴い、2008年に180億通あった普通郵便は、昨年2021年には60億通と3分の1に減っています。
この取り扱い量では、現在の週6日間24時間〜48時間配達という膨大なコストのかかるサービスを維持することが困難になっています。
2021年の1年だけで13億ユーロ(約1770億円)もの赤字となった、手紙やはがきなどの(日本の第1種郵便)事業に対し、フランス政府は昨年5,000万ユーロ(約68億円)の支援を行い、配達日数延長を許可しました。
現在、フランスの普通郵便の95%が2011年に導入された「エコロジック」で郵送されていることからも、ラポストは「プリオリテ」サービス廃止に踏み切りました。
膨大な運営コスト、ほとんど空で走るトラック
24時間以内の配達には、夜間も稼働する仕分けセンター、フランス中へのトラックや航空機による運送体制を週6日敷く必要がありますが、取り扱い量が減ったため、トラックがほとんど空で走ることもあります。
ラ・ポストのレポートによると、ディジョン(Dijon)からレンヌ(Rennes)間の運送トラックにはもう500通余りの手紙しか積んでいません。
新サービスの提供、e-レートル・ルージュ
これまで膨大な赤字を出していたにも関わらず非採算事業を維持してきた理由として、ラ・ポストはインターネットなどの契約解約に書面の送付が必須であることをあげています。
こういった需要に対応するため、ラ・ポストは新サービス「e-レートル・ルージュ」(”e-Lettre Rouge”)と呼ばれるサービスを開始し、今後このサービスの認知度を拡大していく方針です。
このサービスを利用する送り人は、20時までにラポストのオンラインショップから文書を登録し、料金をオンラインで支払います。
一方、宛先の住所の最寄りの郵便局は、文面をプリントアウトし、翌日受取人に配達します。料金は現在のタンブル・ルージュと同料金になります。
配送ルートの最適化でCO2削減6万トン
プリオリテ廃止と配達日数の延長のみならず、ラポストはさらに300のトラックの運送ルートと航空3路線を廃止を行い、来年2023年から年間100万ユーロ(約1億3600万円)のコスト削減を見込んでいます。
配送の最適化により、同社は2030年までにCO2を6万トン削減すると発表しています。
執筆:マダム・カトウ