2021年11月16日(火)、コロナ禍が始まって1年半が経過した今、最近の世論調査でフランス人の幸福度が上がったことがわかりました。調査会社エラブ(Elabe)社によると、フランス人の幸福であるための「優先順位」が変わったようです。
「黄色いジャケット運動」から3年、何が変わった?幸福の定義
今回行われた調査では、フランス人の78%が「幸福」だと回答し、しかもその中の10人に4人は「とても幸せ」と答えています。
フランスでは3年前の2018年11月17日のデモを機に「黄色いジャケット運動」(Mouvement des Gilets jaunes)が起こっています。
ガソリンへの増税が発表されたことに起因し約2年ほど続いたこの運動は、「購買力の低下」「格差」に対する生活への不安、特に労働者層や年金生活者の不満が一気に噴出したものでした。
あれから3年経ち、コロナ禍という疫病により数多くの死者が出て、重傷者で病院が逼迫する中、「当たり前」だと思っていた日常生活が根底から覆される恐怖を経験しました。
そのことが「幸せとは何か?」の定義自体を考え直す契機になったようです。
コロナ禍で優先順位が「激変」、車、スマホ「どうでもいい」脱消費社会へ
つまり、今まで苦だと思っていた事は「些細な事」として捉えられる傾向が見受けられるようになりました。
人生にとって最も大事なことは「健康である事」「自分の体をいたわる事」「家族との良い関係を保つ事」で、これまで「幸福の要素」として上位を占めていた「いい車を所有する」や「世界一周旅行」そして最新の「スマホ」を買うことなどは「取るに足らないこと」となっています。
そして、職業に関しては「自分が選んだ仕事をすること」、「何か自分の手で作りあげること」などが見直されています。
一種の諦め、コロナ前「実は幸せだった」のかも?
もちろん、コロナ疲れによる一種の「諦め」や「無気力」のような風潮も生まれていることは否めません。11月に入りまた感染者が増えて来たことも、国民全体の「ガードが下がっている」状況を表しています。
「幸福は(過ぎ去った)後になって気づくもの」(”C’est seulement après qu’on sait qu’il était là.”)とフランスの人気歌手(クリストフ・マエ: Christophe Maé “Il est où le boheur”)の歌にもあるように、今から思えばコロナ禍の前は無邪気で「幸福」だったのかもしれません。
「フランスで一番幸せな人」たちはどこに住んでいる?
フランス人の幸福度を地域別にみると、最も幸福なフランス人たちはロワール地方(Pays de la Loire)に住んでいます。今回の調査で、この地方では住民の42%が「とても幸福」と答え、73%が「幸福」と答えています。
調査会社はこの結果を、ある意味「当然」と分析しています。
なぜなら、ロワール地方はフランス全国の中でも経済が安定しており、失業率が低いからです。この地方では「自分の将来に楽観的」な人も63%と高くなっています。
フランス北西部のブルターニュ地方(la Bretagne)の住民もほぼ同程度の高い「幸せ度」を感じています。続いてボルドー市(Bordeaux)などがある西部のヌーヴェル=アキテーヌ(Nouvelle-Aquitaine )地方でも、「幸せ」と答えた人が70%に上ります。
「とても幸せ」と答えた人が多い他の地方は、グラン=エスト(Grand-Est)とノルマンディー(Normandie)ですが、これらの地方に共通しているのは2018年に比べ「購買力」が大幅に改善していることです。
「幸福度」の向上にはやはり「購買力」が大きく影響しているようです。
フランス人はなぜ引っ越したい?
経済的な理由もさることながら、幸福度の重要なバロメーターの一つとして、住んでいる地域の「治安」が挙げられます。
オ=ドゥ=フランス地方(Hauts-de-France)(34%)やブルターニュ地方(30%)の住民が、住んでいる地域の「治安」を「最も評価している点」としている一方、マルセイユ(Marseille)市を含むプロヴァンス地方(Provence)(39%)パリを含むイル=ド=フランス地域圏(Ile-de-France)(38%)は「最も悪い点」としています。
「可能であれば別の地方に引っ越したい」と答えた人が最も多かったのは、パリを含むイル=ド=フランス地域圏の27%で、全国平均より6%高くなっています。
一方住んでいる地域を「離れたくない」と答えた人が最も多かったのは「幸せ度」が高いブルターニュ地方で、全国平均より13%も高い69%にも上ります。
「生活の質の向上」には「家族のつながり」が大事
コロナ禍で、特に都市部に住む人の「引っ越し願望」が高まっていますが、理由には主に「生活の質の向上」と「自然に近づく」ことが挙げられています。
そしてこの傾向は特に子供のいる家庭で顕著に現れています。
今回の調査の大きな特徴のひとつとして、この「家族とのつながり」の重要性が大幅に高まっていることが明らかになっています。
執筆:マダム・カトウ