フランス ワクチン接種率にも格差?収入や政治志向も影響

2021.08.03

フランスワクチン接種にも格差

8月3日(火)、フランス国民の50%に当たる3400万人が2回のワクチン接種を完了していますが、昨日フランス健康保険局(l’assurance maladie)が発表した地域別の接種率を見ると、自治体ごとに大きな格差があることがわかりました。

 

ワクチンの南北問題、自治体の収入による格差

フランス国内でワクチン接種率が最も低い地方はプロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地方(Provence-Alpes-Côte d’Azur)とオクシタニー地域圏(Occitanie)で、この2つの地方は南フランスに位置しています。

中でも接種率が最も低い自治体は、人口7万人のセヴェンヌ町(Cévennes)、および人口9000人あまりのオート・プロヴァンス=ペイ・ドゥ・バノン村(Haute Provence-Pays de Banon)で、全国平均より約30%も低くなっています。

一方、フランス全国で最も接種率が高い町はパリから250kmに位置する北フランス、ノルマンディー地方(Normandie)の避暑地トゥケ(Touquet)です。

 

政治的志向、職業も接種率に反映

地政学者ルーシー・ギミエール(Lucie Guimier)氏によると、南東フランス、プロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域圏(Provence-Alpes-Côte d’Azur)の医師は過去10年間のデータを見ても、ワクチン接種に最も懐疑的であることがわかっており、地元の医師の見解がそのまま住民のワクチン接種率に反映しています。

同氏はまた、ワクチン接種に政治的志向も大きな影響を与えていると指摘しています。

南東フランスは、環境問題に関心が高い左派エコロジスト系政党の支持者と、極右の国民連合党(Rassemblement national )の支持者が非常に多いことでも知られています。

そして、国民連合党の支持者には自営業者の割合が高く、自営業を営む人は「自由」であることに大きなこだわりを持っています。

フランス政府への「反抗心」?からワクチン懐疑

また「地元志向」が強いこういった地域では、外部(中央政府)から「押し付け」られる物にとりわけ懐疑的になる傾向があります。

先述のセヴェンヌ町では、新型コロナワクチンに限らず、歴史的に見てもワクチン接種への強い抵抗も分かっていますが、この傾向は「田舎」の小さな村に限ったことではありません。

プロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域圏最大の都市で、パリに次いでフランス第二の都市であるマルセイユ(Marseille)市民もパリ(政府)からの「命令」に懐疑的な傾向があり、それがワクチン接種状況にも反映されているかのようです。

 

高収入、高学歴の多い自治体ほどワクチン接種率高く

フランス保健局は、自治体ごとのワクチン接種率をさらに住民の収入や学歴、役職などに分けて分析しています。

その結果、接種率がこれらの社会的要因を明確に反映していることが分かっています。

つまり、収入や学歴、社会的地位の低い住民の割合が高くなればなるほど、ワクチンの接種率は下がり、逆に高収入、高学歴で管理職の割合が高くなればなるほど接種率は上がっています。

この傾向は明白に数字に表れており、富裕層の多い自治体の接種率の平均は47.2%で、貧困層の多い自治体の平均は35.3%と、その差は実に10%にも及んでいます。

大都市ではさらに顕著

パリ市を含むイル=ド=フランス地域圏(Ile-de-France)で、収入の高い上位10%の自治体と下位10%の自治体における接種率はそれぞれ47.9 %と25%で、20%以上の差がついています。

しかも、貧困層の多いセーヌ=サンドニ(Seine-Saint-Denis)県などは、エッセンシャルワーカーが多いことからか、新型コロナ感染者数もパリ市内20区内よりも格段に多くなっています。

 

貧困層はあらゆる面で不利

ソルボンヌ大学(Université Sorbonne)の公共衛生学者ピエール・ロンブライル(Pierre Lombrail)氏は、この格差の要因について「低所得低学歴層にはあらゆる面でハードルが高くなっている」と述べています。

つまり、ワクチン接種をするかどうかの判断には、医療関係者にワクチンの安全性について確認を行い、医学的な説明を理解しなくてはなりません。そもそも貧困層の多い地域では医師や病院の数も少なく、医療へのアクセス自体にも格差が生まれています。

また、医療関係、ワクチン情報などもデジタル化が進み、「情報を自ら取りに行かなくてはならない」ことも、格差の要因となっています。

執筆:マダム・カトウ

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