2月23日(火)、コロナ禍で昨年10月30日より閉館中のルーブル美術館では、大掛かりな改装と修復作業が行われています。平時にはとても実施困難な、世界一の入場者数を誇る美術館の改装工事が前例のない順調さで行われています。また、閉館中もルーブルを楽しんでもらおうと(?)Podcast(ポッドキャスト)で美術品にまつわる裏話を発信しています。
年間1千万人の入場者、困難な10箇所の改装工事を一気に
コロナ禍以前のルーブル美術館では、毎週火曜日というたった1日の閉館日に改装工事や修復を行っていたため、作業には膨大な時間が掛かっていました。ところが昨年からのコロナ感染拡大で、フランス政府が美術館等の閉館を決定し、前例のない長期閉館となっています。この期間を利用し、絵画や彫刻の埃落としや修復、展示の再配置や入場口のオーガナイズの変更、目録の確認などが行われています。
昨年3月から保留になっていた10の改装工事は今回の閉館中にスタートしており、現在古代エジプト美術部門や大展示室(グランドギャラリー)などの工事が行われています。250人の職員や職人が進める作業は、開館時に比べ何倍ものスピードで進んでいます。
モナ・リザも人目を避けてひっそりと
修復はイタリア絵画やエトルリア美術の部屋、方形のサロン(サロン・カレ:Salon Carré)を中心に進められています。日に3〜4万人の入場者が必ず前を通っていたであろうモナ・リザ(La Jocondo)も、壁から降ろされ現在は修復中とのことです。
美術品部門の修復作業責任者、エリザベート・アントワーヌ=クーニク(Élisabeth Antoine-König)氏は「眠れる森の美女」が目覚める時には「館は完璧な状態になっているでしょう。入場者は、床がピカピカに磨かれていたり、展示用のショーケースが新品になっていたり、照明が明るく鑑賞しやすくなったルーブルを再発見すると思います」と語っています。
ルーブル美術館のPodcast、「アートと犯罪」ミステリーファン必聴
閉館中とはいえルーブル美術館は眠っているばかりではありません。
今月半ば、「ルーブル美術館の捜査簿」(仮題)(Les enquêtes du Louvre)(仏語のみ)に題されるPodcast(ポッドキャスト)に、4つの新しいエピソードが追加されました。
このPodcastは、ルーブル美術館が収蔵する美術品にまつわる「ダーク」な裏話や盗みや殺人、誘拐や詐欺などの犯罪を、ルーブルの修復専門家や、歴史家、学者、警察の捜査官など、様々な専門家のインタビューを交え、20分のストーリーにまとめたものですが、毎回「…ルーブル美術館は…危険な場所なのです」と、まるでミステリー小説のようなアナウンスで始まります。
今回リリースされた作品の一つに、フランスの17世紀古典派を代表する画家、ジョルジュ・ドゥ・ラ・トゥール(Georges de La Tour)作の「ダイヤのエースを持つイカサマ師」(1635-1638) (Le Tricheur à l’as de carreau)が取り上げられています。
舞台は17世紀のイタリア、貴族が「ポーカーの起源とも言われる」(出典:Wikipedia)「ピリミエラ」と呼ばれるトランプを使ったイタリアの伝統的なゲームを行なっているシーンで、詐欺師が何をしようとしているのかを、カード収集家が解説しています。
例えば、右端の若者は貴族で詐欺師のいいカモになっています。17世紀には貴族の子息の賭博による借金が問題になり、ルイ13世は彼らの借金を帳消しにする法律を発令した…などの裏話もあります。イカサマ師は、このゲームで最も点数が高いエースを隠し持っており、貴族の女性が疑いの眼差しを向ける瞬間にワインを運ぶ給仕もグル、という具合に当時の人が見ればすぐにわかるよう細部にわたり描かれています。
Podcastはフランス語のみですが、美術ファン必聴です。
再オープンは未定、ルーブル美術館バーチャルビジットはいかが?
ルーブル美術館では館内のバーチャルビジットも用意されています。解説はありませんが、部屋ごとに人気の名画や作品がクローズアップされ、最後に館内での位置も示されます。残念ながら今のところ再オープンの見通しは立っていませんので、しばらくバーチャルでの見学をお楽しみください。
執筆:マダム・カトウ