12月12日(木)、年金改革に反対するフランス国鉄、パリの地下鉄職員を中心として12月5日に始まったストライキですが、昨日のエドワール・フィリップ(Edouard Philippe)首相の演説で各組合は反発をさらに強め、来週17日に大規模なデモを呼びかけています。
フィリップ首相の演説に落胆と怒り
年金改革反対大規模ストで、フランス特にパリ市内の交通がマヒしてからすでに7日が経過した昨日11日、フィリップ首相による年金改革の内容を説明する演説が行われました。
政府はすでにスト開始直後、新制度の適用対象者を当初の《1963年生まれの人》から《1975年生まれの人》に変更し鎮火を試みましたが、ストは続行され、現状打破のため昨日の演説が待ち望まれていました。
しかしながら、首相が今回の改革による「ポイント制」への移行と共に、「満額支給年齢を64歳とし、それ以前に退職する場合は1年につき5%減額、それ以降に退職する場合はプラスにする」と発表したことから、逆に新たな怒りを買ってしまいました。
現在、フランスでは62歳から定年退職が可能で、満額支給を受けるには一般的には最低40年~43年(161~172四半期)の就労が条件になっています。(複数の例外有)
新制度でも62歳定年は可能ですが、満額支給ではなく2年分(5%×2)が減額されることになります。つまり実際は、満額での受給年齢が2歳上がることになります。
改革支持派の組合も参加を表明 17日のスト激化の予想
フランス最大の組合CFDT(Confédération française démocratique du travail)は、今回の改革は「今までの制度では年金をほとんど受けることが出来なかった短期労働者にも年金を与える」とポイント制の移行を「現行の定年62歳を上げない」という条件つきで支持していたので、ストライキに参加していませんでした。
しかしながら、委員長ローラン・ベルジェール(Laurent Berger)氏は、フィリップ首相の演説の後「越えてはいけないラインを越えた」と、ストへの参加を表明しました。
5日からすでにストに突入しているCGT(Confédération Générale du Travail)をはじめとする各組合は、17日にさらなる大規模デモを呼びかけています。
組合側は、政府に大きな圧力をかけることで改革法案の撤回を目指しており、少なくともクリスマスまで、もしくは《無期限スト》に発展する可能性もあります。
スト続行、パリ市内の交通マヒ
本日もフランスの国鉄およびパリ市内の交通はマヒしています。
- TGV(高速鉄道)、インターシティ、Transilien(イル=ド=フランス地域圏鉄道) 4本に1本
- TER(地域圏急行輸送) 10本に4本
- ユーロスター: 4本に3本
- タリス: 3本に2本
パリ地下鉄(RATP)全14路線中10路線が不通
- 運行完全停止中の路線: 2、3、3bis、5、6、7bis、10、11、、12、13号線
- 一部の時間帯だけ運行 (6時半~9時、16時半~19時半): 4、7、8、9号線
- 通常運行: 1、14号線
- RER(イル=ド=フランス地域圏急行鉄道網) A:通勤時間帯のみ2本に1本
- RER B:通勤時間帯のみ3本に1本
- トラム: 路線により50%~80%運行
- バス : 3本に1本
通常運行の路線及び一部運行の地下鉄、バスには多くの人が殺到し、乗車できない可能性が高いです。
また、多くの駅が閉鎖になっています。
詳しくはパリ地下鉄サイト RATP(英語版あり)へ
なお、5日からストに参加していた管制塔はスト参加を表明しておらず、フライトキャンセルなどは予定されていませんが、遅延などの可能性はあります。
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また、パリ環状線及び近郊は、今朝も8時の時点で427kmの大渋滞を記録しています。
執筆:マダム・カトウ