4月25日(木)、マクロン大統領は昨年11月から続く「黄色いベスト運動」を受け、1月15日から約3ヶ月間に大統領自らが行った国民討論会(Le grand débat)の結果にともない政府の改革案を発表しました。
目玉は50億ユーロの大幅減税、富裕税は再導入せず
昨日、過去半年間にわたり続いている黄色いベスト運動を受け行われた、国民との対話(国民討論会)の結果とそれに対する改革案を発表する大統領の演説が約1時間にわたって行われました。
黄色いベスト運動の引き金の一つとなり、国民の大きな不満の一因である物価上昇による生活レベルの低下に対し、マクロン大統領は50億ユーロ(約6225億円)の所得税減税を提案し、その財源は企業に与えられている一部のニッチな減税の廃止と国家予算の歳出抑制によって確保すると発表しました。
黄色いベスト運動が強く要求していた富裕税(ISF)の再導入に関しては、「富裕税自体は不公平な税であり、そもそも富裕層への追加課税は無くなったわけではない。富裕税は富裕不動産税(IFI)とう形で存在し続けている」と否定する立場を貫いています。
年金問題に関して
年金受給者の生活苦も今回の国民討論会で注目された議題の一つですが、欧州他国の状況と比較しつつフランスも年金財源確保のためには労働時間を増やさなければならないと示唆しました。
マクロン大統領は対策に関して、「週35時間労働の改正や現行62歳の年金支給開始年齢の引き上げなどは希望しておらず、年金の掛け金の満期年数を延ばす選択肢をもうけるといった方法」もあると述べました。
また、2,000ユーロ(約24万8000円)以下の年金を物価上昇指数にあわせて毎年再評価することを約束しましたが、年金生活者の副次収入などを考慮に入れるかなどの詳細は決まっていません。
フランスの高級官僚システムの改革
フランスの事務系キャリア官僚は、通称エナルクと呼ばれる国立行政学院(ENA)出身者で占められています。マクロン大統領は現在のエリート官僚選抜システムが今のフランス社会を反映していないとし、自身の出身校である国立行政学院の解散を示唆し大きな議論を巻き起こしていますが、今回は、「5月に官僚システムの改革案を発表する」という発言にとどめています。
また、マクロン政権が掲げていた公務員の12万人削減について、「無理のない減員を」と方向転換する姿勢を見せ、夏までに結論をだすと述べています。
地方自治体の権限拡大、小学校1クラス24人制、環境問題など
大統領は、住宅問題やクリーンエネルギー政策への地方自治体の権限拡大や、小学校の1クラスの人数を24人に抑える施策と法令化、また環境問題への市民の参加など、多岐にわたって発表しました。
発表への支持は37%のみ
大統領官邸(エリゼ宮)で行われた今回の発表後の世論調査によると、大統領の演説に納得した人は37%にとどまり、フランス国民の10人中6人は「納得していない」と回答しています。
執筆:マダム・カトウ
1ユーロ=124.51円