マクロン大統領「フランスの貧困と戦う」宣言、金持ちの味方のイメージ払拭か?

2018.09.14

エリゼ宮
マクロン大統領は、9月13日パリの人類博物館(Musée de l’Homme)にて「貧困を撲滅」するための政府の対策を発表しました。公約の一つに掲げられ、待ち望まれていた貧困対策ですが、マクロン大統領は最近の世論調査で支持率が最低となったため、巻き返しを図っているとも言われています。

 

フランス 国民の14%が貧困層、880万人に

2016年の調査によると、フランスの貧困層は人口の14%にあたる880万人が月々1026EUR(約13万3千円)以下で暮らしています。これは、フランス国民の中間層の収入の40%、つまり半分以下となっています。
18歳未満では、貧困層の割合は19.8%、実に5人に一人の子供が貧困に陥っています。
マクロン大統領は昨日の演説で「現代社会において貧困はあってはならない」、と2020年の法改正を目指す「貧困撲滅対策」を発表しました。

 

予算80億ユーロ、子供、若者支援強化に3.5億ユーロ

今回発表された計画によると、予算は4年間で80億ユーロ(約1兆472億円)で、特に若者や子供の支援を強化するとしています。

子供、若者支援の大枠は下記のとおりです:

  • 保育所を「支援強化地区」、つまり失業率の高い自治体に追加予算を注入し増設することで、公立の保育所不足を解消し、子供を預けられないために失業している人を援助する。
  • さらにこれらの地区で、家で朝食が食べられない子供に学校で朝食を提供したり、給食を1ユーロ(約130円)で提供する。
  • 学校からドロップアウトする子供に職業訓練などを受けさせ、社会からのドロップアウトを防ぐ。
  • 3.5億(約457億円)を投じ、「若者保証」(Garantie jeune)と呼ばれる、16歳から25歳の就業援助対象者の枠を10万人から50万人に増やす。

 

「包括給与」で生活保護の仕組みを改正、無い人に多くを求める傾向?

マクロン大統領はまた、複数存在する社会保障からの援助を一本化し、「包括給与」(revenue universel)制度への変更を検討していると発表しました。
現存するRSA (Revenu de solidarité active)という「復職支援金」と呼ばれる生活保護は「仕事を探す努力をする」ことが条件で支給され、受給者が就職した場合でも、一定の給与に満たない場合は援助金の受給を続けられるものですが、低所得就業者の受給条件や申請が複雑です。さらにこの援助金の存在を知らないなど、低所得層の70%がこの生活保護を受けていないといわれています。
そして、このRSAを受給する完全失業者が就職して非受給者になった割合はわずか9%で、毎年40億ユーロ(約5320億円)かかる本制度の効果の低さが問題になっています。

貧困を未然に防ぐ

今回の計画では 、収入の不安定を防ぐことで貧困に陥るのを未然に防ぎ、完全失業者に対しては「援助」より「社会復帰」や「就業」に力を入れることで、貧困層を減らすことが強化されています。
ですが、この「包括給与」がいったいいくらになるのかなどの具体的な内容が明らかではないことに加え、受給中の失業者は本人に「適当な」雇用が2件あった場合は就職を拒否することができないなど、失業者側にも努力を強いるものになっています。

「15ヶ月前まで貧困が何だかわかっていなかった」マクロン大統領

今回の政府の計画は子供に注視し、貧困層の家に生まれたから何代も貧困から抜け出せないという悪循環を断ち切ろうとする「野心的」なものといえますが、オランド前大統領のときに施策された社会復帰プログラムも成功例はわずかであったことから、今回の政策も効果のほどは疑問視されています。
また、すでに財政赤字が増え続けている国家予算から80億ユーロをいかに捻出するかなどについても、今回は言及されていません。
しかしながら、ようやく「貧困層」対策への発表を行い、これから議論を重ねていくという姿勢を評価する声も上がっています。

マクロン大統領は、就任直後にISFと呼ばれる富裕税を無くしたことや、貧困層に対する過去の顰蹙(ひんしゅく)発言で、「金持ちの味方」というレッテルを貼られています。
今回の発表で「15ヶ月前は私も貧困が何だかわかっていなかった」、と自ら反省する意を述べ、そのイメージ払拭に乗り出したといわれています。

執筆:マダム・カトウ

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