4月25日(木)、15日に起こった大規模な火災で尖塔と屋根が崩落したパリのノートルダム大聖堂(Cathédrale Notre-Dame de Paris)にある荘厳なパイプオルガンが、奇跡的に被害を免れていたことが明らかになりました。
あれだけの火災にも関わらずほぼ無傷
ノートルダム大聖堂のパイプオルガンのメンテナンスを担当している歴史的建造物専門家やオルガン製作技師が、23日(火)およそ2時間かけてオルガン内部までたどり着き、内部を入念に調査しました。
ノートルダム大聖堂のオルガン奏者を15年前から努めているジョアン・ヴェクソー(Johann Vexo)氏によると、「何も燃えておらず、溶けてもいない、楽器内部がほんの少しだけ消火用の水で濡れているだけだ。ただ、楽器の隅々まで乾いた粉塵が入り込んでいる。」とのことで、パイプオルガンにはほとんど被害がなかったことを明らかにしました。また、「粉塵を取り除く必要はあるが、おそらく解体する必要はない」とも述べています。
火災発生時はミサで演奏中だった
火災が発生した18時15分頃、ヴェクソー氏は毎日行われている夕方のミサでパイプオルガンを演奏していて、警報が鳴ったため建物の外へ避難しました。その際、ヴェクソー氏は後の大火災はまったく予想もしていなかったということです。
ノートルダム大聖堂パイプオルガン
ノートルダム大聖堂のパイプオルガンは、フランスのパイプオルガン製作の巨匠、アリスティド・カヴァイエ=コル(Aristide Cavaillé-Coll)が1863年から1868年にかけて製作した、8,000本のパイプを持ち、オルガンの音色を変えるストップ(英:stop/仏:jeu d’orgue)と呼ばれるつまみが86ある、カヴァイエ=コルの作品の中でも非常に大型のパイプオルガンです。
パリ同時多発テロの犠牲者を追悼するミサでも演奏され、その荘厳な響きは世界中の人に届きました。前出のヴェクソ―氏も、「世界で最も美しいオルガンの一つ」と述べています。
あの大規模な火災から生き延びたパイプオルガン、その音が再び大聖堂に響き渡る日が一日も早く訪れることを願ってやみません。
執筆:Daisuke