フランスにおける医療現場の人手不足解消策の発表を18日に控え、政府は1972年に導入された医学部の選抜試験の廃止を検討しています。
合格、7人に1人の狭き門
フランスでは毎年約6万人が医学部に入学しますが、2年目の進級前に選抜試験が行われ、学部に残れるのは定員の8205名のみです。合格率は13%、志望者の「足切り」を目的としたこの試験が、いま政府による病院の人手不足解消策の一環として見直されようとしています。
クレルモン・オーヴェルニュ大学( l’Université Clermont-Auvergne)医学部の教育・研究組織UFRの副学長で、教養課程(医科、外科、歯科、看護婦共通)担当の ジャン・マルク・ガルシエ(Jean-Marc Garcier)氏は、「医学部の教養課程の1年間は、選抜試験に受かるための受験勉強の期間と化しています。学生は私生活を犠牲にし、過重なストレスと戦いながらひたすら勉強しなくてはなりません」、と選抜試験により医学生が学業と私生活のバランスを崩している事実を指摘しています。
ガルシエ氏はまた、「学生たちがもっとリラックスしていれば、今より効果的で適切な授業を行うことができる」、と選抜試験廃止による好影響を示唆しています。
マークシート試験より期末の評価へ?政府は代案を模索
医学部特有の選抜試験の代替として、現在歴史地理学部や哲学部で採用されている、期末に生徒の知識や能力で判断する評価制度を導入することも考えられますが、今のところ複数の案が出ているものの何も決まっていません。
「各大学に定員を自由に決めさせる一方で、大学のある地域や専門学科によっては選抜試験の導入を可能にする」、「政府が医学部の定員ではなく最低人数だけを決める」、などの案がでています。
さらに、「選抜試験の時期を2年目ではなく3年目に変更」し、不合格の学生については診療部門などへの進路変更をスムーズにすることも検討材料にあがっています。
挫折する学生を減らし、診療医療部門への進路変更前向きに
全国インターン組合(l’intersyndicale nationale des internes) の代表、ジャン・バティスト・ボネ(Jean-Baptiste Bonnet)氏は、「学生を挫折に追い込まないで、医者になる以外の(診療医療部門への)進路も前向きに考えることを可能にすることが大事です。診療医療部門は決して医学の掃き溜めではありません」と話しています。
氏は政府が医者を増やすための予算増を期待しつつ、「(改革により) 段階的に、医者になれる人を選ぶことができるようになるでしょう。そして、選抜される医者のタイプも変わると思います。たぶん、いわゆる科学という意味の医学だけでなく、人文科学や人間関係にも関心がある人など。こういった部分は大学1年生から見抜くのは難しいです」、と医学部の選抜方式の改革に前向きな姿勢を見せています。
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執筆:マダム・カトウ