フランスの新聞「ル・フィガロ(Le Figaro)」は2月20日(水)、職業名や役職名に女性形を追加することがアカデミー・フランセーズから公認される見通しを明らかにしました。
アカデミー・フランセーズ(l’Académie Française)は、公式機関などで使用されるフランス語などを決定し、辞書や文法規則を公式に定める機関です。
職業名に女性形を
言語には、社会の流れが反映されます。フランスでは男女平等意識の高まりから、男性形しかもたない職業名や役職名に女性形を加えようとする動きが起こっています。
アカデミー・フランセーズは、この議論について過去に何度も見解を発表しています。例えば、どの単語ならば辞書に入れていいか、といった意見を表明するものです。
日本でも「看護婦」ではなく「看護師」の使用が一般的になってきました。フランス語の名詞には必ず性別があり、文法上の区別が必要であるため、職業名の女性形を新たに認めるどうかの判断はよりシビアです。
男性形が一般的な職業名
例えば、「先生」「教授」を表す”professeur”は、女性に対しても男性形を用います。最近では、意識的に”professeure”と書く人もいます。
正式な文書では、女性に配慮して”professeur-e”、あるいは男女の区別を避けるために複数形で”professeurs”と表記する場合もあります。
他には「弁護士(avocat-avocate)」「部長、所長(directeur-directrice)」など、男性形のほうが一般的な職業名はいくつもあります。
議論の特徴
今回、正式に女性形が認められることは、社会における女性の地位が認識された結果といえるのでしょうか。
男女平等意識の成果といえるか
「職業名や役職名の女性形導入によって職場における女性のためらいや人違いのリスクが減る」、とフランス国立科学研究センター(Centre nationale de la recherché scientifique, CNRS)のダニエル・リンハルト氏は言及しています。
アカデミーフランセーズによる今までの見解
アカデミー・フランセーズ側はこれまでの見解において、「文法上の性別と男女間の社会的地位は関係がない」という立場を取ってきました。
これは、フランス語の起源であるラテン語の時代から性の区別が存在しており、男性形と女性形という区別は文法規則のためにおいてのみ存在するのだという立場です。
なぜアカデミー・フランセーズは即決しないのか
男女平等意識の高まりや、女性の社会的地位の向上は長らく議論されてきた問題です。
今回のような決定がより早くになされなかった原因について新聞「レクスプレス(l’Express)」は、アカデミー・フランセーズが言語使用における権力を固持しようとする態度や、言語の変化に対して保守的な立場を取っていることにある、と分析しています。
社会的な影響は大きい
ともあれ正式な文書に新たな形の言語使用が認められれば、文書作成をはじめとする様々な場面で変化が起こることになります。
これまでは個人的な趣向として役職名に女性の”e”をつけていた人も、堂々と職場で立場を示すことができるようになります。
細かい使用規則や、新たな規則の実施段階については未決定の状態ですが、今後も注意深くフランス社会とフランス語の関係を見ていきましょう。
執筆あお