パリで10日(日)、4月に自転車シェアリングサービスVélib’(ヴェリブ)の従業員がおこなった、賃金引上げ等を求めるストライキを理由に、いくつかの従業員に対して解雇通知が送られていたことが明らかになりました。
Vélib’ ヴェリブとは
パリ市が2007年7月より運用を行っている自転車シェアリングサービスで、パリのいたるところに設けられたスタシオン(Station)と呼ばれる、Vélib’専用の駐輪スポットで、利用者自身で貸出、返却を行う、画期的なシステムとして注目を集めています。
サービスは24時間提供されていて、スタシオンはパリ市内、及び近郊におよそ1700ヶ所あり、借りた場所とは違うスタスィオンに返却することが可能です。現在は通常の自転車の他、電動アシスト機能付きの自転車も貸し出されていて、利用料金は通常の自転車は一日1.7ユーロ(日本でおよそ224円 1ユーロ:132円計算)の登録料で利用できます。最初の30分は無料で使用することができ、30分以内にスタシオンに返却するば、利用料金はかかりません。
詳しい利用料金などは⇒2017年11月6日記事 自転車シェアリングサービス Vélib’ に新顔が仲間入り!料金は…?
環境に優しい乗り物で、パリ市民のみならず、旅行者の重要な移動手段の一つとして定着しています。現在では、一日当たり平均でのべ11万人もの人が利用している、世界最大の自転車シェアリングサービスです。
違法なストライキ
2018年1月1日よりJC DecauxよりVelib’ の管理を引き継いでいるSmovengoの多くの従業員が、4月17日以降、賃金引上げ、労働条件の改善、サービスの質の向上のため利用可能な自転車やスタシオンの増設などを求めてストライキを起こしていました。
この4月17日のストライキを受け、パリ大審裁判所(Le tribunal de grande instance de Paris 日本の地方裁判所にあたる)は5月14日、「今回のストライキは違法である」と判断しました。ストライキの事前通告がされていなかったと判断されたことが、違法の決め手になりました。
食い違う主張
Smovengo側は、ストライキの事前通告がなかったと主張していて、判決はこのSmovengo側の主張が認められ、今回のストライキは事前通告なしで行った違法なストライキと判断されました。フランスでは、軍人など一部の職種を除き、公務員であってもストライキなどをの争議行為をする権利が与えられています。ストライキなどを行う場合には、少なくとも5日前までに事前通告を行う必要があります。
一方、労働組合側は事前通告は行ったとしており、ストライキは合法に行われたものだと主張しています。
事前通告なしに多くの従業員が仕事を放棄しストライキに参加したと主張する会社側と、事前通告をして合法的にストライキは行われたと主張する労働組合側と、主張が大きく食い違っています。
ストライキ参加者に解雇通知
先週の土曜日(9日)、「違法な」ストライキに参加したとして、Smovengoは記者会見の中で、何人かの少なくないストライキ参加者に対して「重大な不正行為」「プロ意識と会社への忠誠心の欠如」を理由に解雇通知を送ったことを明らかにしました。
Smovengoは今回の解雇通知送付に関して、規則や法律に準じている、と述べています。
これに対し、労働組合と共産党系の市議会議員は昨日行われた発表の中で、パリ12区のカトリヌ・バラッティ=エルバス(Catherine Baratti-Elbaz)区長がストライキの事前通告を拒否したと批判し、Smovengo側が主張する「事前通告がない違法なストライキ」そのものに対して異議を唱えています。
本日11日、労働組合側は正式にコメントを発表する予定です。
時系列
4月12日以前 労働組合側が4月17日にストライキをすると事前通告(したと主張)
4月17日以前 パリ12区区長がストライキの事前通告を拒否(したと主張)
4月17日当日 労働組合ストライキ決行。会社側は事前通告を知らず職場へ戻るよう指示
5月14日 パリ大審裁判所「事前通告なしによる違法なストライキ」と判断
6月9日 会社側はストライキに関係したいくつかの従業員へ解雇通知送付
6月10日 労働組合側が抗議
今後もしばらくこの問題は続くとみられますが、利用者が安心して安全に利用できるようにだけはしていただきたいものですね。
執筆:Daisuke