ミッテラン大統領など歴史にのこる政治家を輩出した社会党(Parti socialiste)は、フランスの2大政党の1つでしたが、前回の大統領選から急速に存在感がなくなっています。3月29日、新党首に49歳のオリヴィエ・フォール(Olivier Faure)第一書記長が選出され、再起を図っています。
オランド前政権不人気の十字架
2012年に極右のマリーヌ・ルペン(Marine Le Pen)氏を破って当選したオランド前大統領でしたが、政権に就いてからの政策が党内外からの反発をくらい、任期満了の5年目には支持率が18%にまで落ちました。
当時のフランスは長い不況のトンネルの出口が見えない状態で、失業率は9.5%(ちなみにドイツは4~5%)と高止まりしたままでした。公約に失業率の低下を大きく掲げていましたが、2015年には10%を超えるなど、オランド政権の間中上がり続け、最後の6ヶ月でようやく下がる兆しが見えたという結果に終わっています。
オランド前政権は発足当初、財政赤字の削減(GDPの3%以内がEU内の規定)に注力しすぎ、これが党内に「フロンド派」(Les frondeurs)と呼ばれる反対勢力を生み出すきっかけになりました。
また、2015年には観光ゾーン(zone touristique)を主要都市に設定することでゾーン内商店の日曜営業を許可し、労働裁判の罰金の上限を設定するなど、労働者より企業寄りの政策にフロンド派は反対を表明、内部分裂がいよいよ顕著になりました。
前回の大統領選で大敗
2017年の大統領選では、オランド前大統領の党内での求心力のなさもあり、ついに現職の大統領が出馬しないという事態になりました。オランド前大統領の側近から経済およびデジタル産業大臣(Ministre de l’Économie, de l’Industrie et du Numérique)まで勤めたマクロン氏(現大統領)も早々に離党、大統領選には、やはり不人気だったヴァルス前首相やフロンド派の元大臣10名近くが出馬を表明しました。しかしこれが支持者の分裂と混乱を巻き起こし、最終的に社会党の候補として大統領選に出馬したアモン候補は、第一回投票でわずか6%の得票で大敗に終わっています。
離党相次ぐ
社会党の不人気と大統領選挙の大敗から、党内の中道派とその支持者の一部は、マクロン現大統領が立ち上げたLREM党(La République En Marche)に流出しています。たとえば、オランド前政権時の、防衛大臣(Ministre de la Défence)ジャン・イヴ ルドリアン(Jean-Yves Le Drian)氏はマクロン政権の欧州及び外務大臣(Ministre de l’Europe et des Affaires Étrangères)となっています。ヴァルス前首相はLREM入党意思を表明するなど(断られて無所属)、社会党の重鎮政治家たちが次々に離党しています。
一方で、社会党内のフロンド派寄りだった支持者たちは、カリスマ党首ジャン・リュック・メランション(Jean-Luc Mélenchon)氏率いる極左フランス・アンスミーズ党(La France Insoumise)に流れているといわれています。
また、大統領選で「国民全員同賃金」(手取り2,186ユーロ、約28万円)を掲げて大敗を喫したブノワ・アモン氏ですが、若い支持者を集めているようです。
新党首、今後の3つの課題
社会党がまた第一党の座を獲得する道のりは長いといわれているなか、新党首は3つの課題を挙げています。
- 党の再構築
- 党に新しい顔を作るーパリの党幹部内だけで決めるのではなく、新しいアイディアや法案を党員や支持者たちから集めるため、プラットフォームを作って意見を吸い上げる。
- 党の存在感の復活ー公の場での議論やメディアでの存在感を復活させる
今週末のイースター(復活祭)を前に、記者会見で「ルネッサンス!」と社会党の復活を強くうち出したフォール党首ですが、果たして党内を統率し地に落ちた社会党の支持率を回復できるでしょうか?
執筆:マダム・カトウ