フランスに住んでいると、家族の在り方に多様性を感じることがあります。例えば、離婚してもクリスマスには子どもを中心に家族団らんをする元夫婦がいたり、親子三世代でスキーやキャンプなどに出かけたりと、これは日本ではあまり見られない家族のかたちだと思います。また、家族の絆を大事にする裏で、時にはハプニングが起こることも……。今回は、そんなフランスの家族事情を“日常のリアル”とともにご紹介します。
「離婚しても家族」がフランス流
フランスでは離婚率が比較的高いにもかかわらず、「離婚後も子どもの前では一つの家族でいたい」という価値観を大切にする元夫婦もいます。そのため、クリスマスや誕生日など節目の家族行事だけは、元夫婦＋子ども＋各祖父母で集まるケースが珍しくありません。
離婚後に別居したとしても、子どもにとっては大切なパパとママ。離婚しても親である「共同親権」が法で定められていますので、子どもがパパの家とママの家を隔週で行くシステムを取り入れている家庭が多いのも、フランス流といえるでしょう。
私の知り合いのフランス人女性は、だいぶ前に離婚して一人娘がいます。大学生に成長した娘は海外へ留学することになりました。その際、娘の空港までの見送りは、元夫婦であるパパとママ＋娘のボーイフレンドが行ったそうです。フランスらしいなと感じたエピソードでした。
仲良し家族がクリスマスにぎくしゃくする場合も…
フランス人にとって、クリスマスは１年で最大の家族イベントです。家族が集まる楽しいひとときである反面、「事情の違い」が表面化されることがあります。
クリスマスの日を誰と過ごすのか…。家族の日程調整は、早ければ11月前半からスタートします。しかし兄弟にパートナーがいたり、お互いに離婚歴がありそれぞれの元パートナーとの間に子供がいたり、個々の家庭に予定があると、家族全員が一斉に集まるのは至難の業です。料理はケータリングを予約し、場所は山小屋をレンタルするなど簡単に外注できますが、日程合わせだけは家族で話し合って決めるしかありません。
ある家族の話しでは、「兄家族はいつも義理の姉家族の集まりを優先する。」「毎年、自分たちの家族が日程の譲歩をしていて不平等。」「今年は転職したばかりで休暇がとれないんだ。」とそれぞれから意見があがり、日程が決まるのはギリギリということも。
また、フランスのクリスマスは、24日の夜（クリスマスイブ）と25日の昼（クリスマス当日）のどちらも非常に重要です。できれば、イブも当日も大切な人たちとお祝いしたいという思いが強いようです。家族で集まる日を少しずらして提案しても、「それではクリスマスの意味がないじゃないか。」と言われる始末。特別な日だからこそ、それぞれに譲れないことがあるのでしょうね。
さらに、クリスマスの温かい団らんの裏で思わぬハプニングが勃発することもあります。例えば、新しいパートナーができて家族に紹介した際、元パートナーの話題が出てしまってその場が凍りついたという話を聞いたことがあります。家族それぞれに事情があるがゆえに「今年も何とかクリスマスを無事に終えた。」と、ホッとするフランス人も少なくないのかもしれません。
祖父母、親、子、孫 みんなで家族旅行がフランス流
フランスに来て驚いたのは、子どもが大人になってからも、親も祖父母もみんな一緒に旅行に行く家族がよく見られることです。こういった家族は、両家の祖父母が長距離移動も可能な健康体で、バカンス費用の多くを負担できる経済力に恵まれている場合が多いです。
私の友人にも、年に最低１回は祖父母、子ども、孫も含めてバカンスを楽しむ人がいます。大きい一軒家をレンタルし料理を分担したり、夜遅くまで語り合ったり、同じ時間を共有することで家族の絆と思い出を育んでいくのです。
ただ、私の周りでは「子どもが小さい頃はおじいちゃんおばあちゃんがかわいがってくれたり遊んでくれたりして有難い反面、義理の家族の仲が良過ぎるので、気が乗らないときでも誘いを断りにくい」という声も耳にします。それでも、家族でたくさんの思い出を共有できるのは素晴らしいことだと思います。
まとめ
離婚しても家族でいられたり、親子三世代で定期的に家族旅行へ行ったりすることを、至極当然に楽しんでいるフランス人。自分の中にあった“家族への固定観念”に気づかされ、日本とは違う家族の距離感には学ぶところも多いです。そして、家族の在り方は、それぞれが心地良く幸せを感じられる関係性でいることが一番なのだと思いました。
執筆 YUKO
