パンはフランス人の胃袋を支えているといっても過言ではないほど、フランスの食卓になくてはならない食材です。日本人のお米と同じように主食のような存在。毎日食べても飽きがこないパンは、多くのフランス人に愛されています。今回は、フランス人に人気のパンの種類や呼び名の由来、おいしいバゲットの食べ方などを紹介します!
形変われば食べ方も呼び方も違う!フランスの定番パン
フランスでパンといえば、代表はバゲットといえるでしょう。街でバゲットを片手に移動する人や自転車の荷台に括りつけられたバゲットを見ると、フランスに来たなぁと実感します。私がフランス語を習い始めた頃、最初によく使った言葉も「 Une baguette, s’il vous plaît. (バゲットを1本ください。)」だった記憶があります。
バゲットは細長くて表面がカリカリッとしているのが特徴です。フランスのパン屋さんに行くとわかるのですが、バゲットにはいくつか種類があります。似たような形状ですが、大きさが違うものが並んでいるのです。代表的なバゲットの種類を3つ紹介します。
1.フィセル ficelle
長さ30㎝~40㎝で、とても細いのが特徴です。ficelle(フィセル)とは「紐」という意味で、名前の通りの形をしています。固めの食感なので、スライスしてカナッペなどに使うことができます。
2.バゲット baguette
長さ60㎝で、最も売れ筋のバゲットです。サンドイッチや朝食などで幅広く食べられています。
3.フルート flûte
長さ58㎝~64㎝で、地域によって大きさが異なります。パリ近郊ではバゲットより軽くて小さいサイズですが、他の地域ではバゲットより太いものが主流です。外はカリッと中はもっちりした食感。スライスしてお料理と一緒に食べます。
原料は同じなのに、形が違うこの3種類のパン。形が変わると食感も変わってくるので、フランス人にとってはそれぞれ別物という捉え方なのかもしれません。以前は、パンの重さに対する価格に規定が設けられていましたが、現在は各地方で呼び名や価格が変わる傾向があります。
フランス南西部では呼び方が変わる人気ペストリー
パンオンショコラ( pain au chocolat )はサクッとしたクロワッサン生地にチョコレートが控えめに入っている、フランス人が大好きなパンです。これと全く同じものが、ショコラティン( chocolatine ) という名称で親しまれているのはご存じでしょうか?
アキテーヌとオクシタニを含むフランス南西地方では、ショコラティン呼びが主流です。この地方にはオック語という地域言語が話されており、オック語のショコラティーナ( chocolatina )からに発展したといわれています。
多くのフランス人は郷土愛が強く、自分たちの文化や言葉に誇りをもっています。パンオショコラが主流の呼び名と認識していても、アイデンティティの象徴かのように地元の呼び方を守り続けているのです。私がトゥールーズへ行ったとき、パン屋さんでショコラティンの札を見つけたときは嬉しい気持ちになりました。
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パン屋さんに行くと、列で自分の順番を待ちながら他のお客さんがどのようなパンを買うか観察することがあります。やはりバゲットは一番人気のようで、多くの人が注文していました。
おもしろいのが、お店によってはバゲットの焼き加減が分かれていることです。ほぼ白い焼き加減タイプ、普通のこんがり黄金色タイプ、焦げ気味のしっかり焼きタイプがあり、焦げ気味タイプを買っていく方もかなりいて意外に感じました。
さらに、大きな塊のカンパーニュ( campagne )と呼ばれる田舎風パン、シリアル入りパン、ほんのり黄色いトウモロコシパンも多くのパン屋さんで扱っており、これらも非常に人気のパンといえるでしょう。
興味をひいたのは、パン スポルティフ ( pain sportive ) と呼ばれるパンです。運動する人や活動的な人向けで、全粒粉・ナッツ・ドライフルーツが入ったものが多く、栄養価も高いのが特徴です。
デニッシュ系なら、クロワッサンとパンオショコラは大人気。ときどき職場で、お誕生日を迎えた本人が自分の誕生日を祝うためにクロワッサンやパンオショコラを大量に差し入れするという光景を見かけます。何回食べても飽きないおいしさだからでしょう。
まとめ
多くの店がお休みする日曜日でも、パン屋さんだけは営業していることもあるくらい、パンはフランスの食卓を支えている大切な存在です。一時期、自家製ホームベーカリー家電がフランスでも流行りましたが、おいしいパンをすぐに買えることから購入派のほうが大多数のよう。フランスにいらした際は、ぜひ街のパン屋さんでおいしいパンを堪能してくださいね!
執筆 YUKO