今回はちょっとした流行語になっている、エスプリカイゼン ( Esprit Kaizen ) についてレポートします。以前からビジネスの分野では、”改善”というキーワードが知られていました。でも、今は若者の会話にも “エスプリカイゼン”という言葉が使われるようになってきたのです。一体エスプリカイゼンにはどのような意味があり、なぜそこまで広まっていったのでしょうか?
ブームの発端は若きフランス人インフルエンサー
フランスで若者に支持されている人気ユーチューバー、現在23歳のイノクスタグ ( Inoxtag )氏をご存知でしょうか 。彼のYouTubeチャンネルは、ゲーム実況、挑戦企画など、エンターテインメントとして楽しまれており、登録者は2025年現在で891万人。彼は、フランスの若者に影響力があるインフルエンサーの一人といって過言ではありません。
イノクスタグが主役のドキュメンタリー”Kaizen”
2024年にフランスで公開された ” Kaizen “ というドキュメンタリー作品は、SNSで活躍するインフルエンサー達がどのように日々の問題を乗り越えたり成長していったりするのか過程を描いたものです。
ドキュメンタリー作品 “Kaizen”
2時間40分という長編ながら、多くの人がこの作品を称賛。彼のファンである若者層だけでなく、付き添いで映画館に来た親世代も高評価の意見を残しています。
その中で、イノクスタグは1年をかけてエベレスト山脈に登る挑戦をしています。普段スポーツで体を鍛えていない彼が、夢だったエベレストに登るチャレンジがファンの間で話題になりました。
イノクスタグのKaizenに若者が惹きつけられた
エスプリカイゼンは、エスプリ( 精神 )とカイゼン ( 改善 ) が合体した言葉です。
ビジネスの分野で使われている改善は、劣ったところを改めて良くしていくことや効率を高める活動を指しています。例えば、フランスでも人気のトヨタ自動車のフランストヨタの方の話で、「トヨタ式改善を取り入れて、さらなる品質の向上を目指す」というのを聞いたことがあります。
一方、エスプリカイゼンは物事に諦めずにチャレンジする、変化を起こす、そして目標に向かって小さな向上を継続していく心持ちを表現したものです。
イノクスタグは ” エスプリカイゼン ” を心に持ち、エベレスト登頂の夢を成功させました。彼の諦めずに挑戦する姿は多くの若者に勇気を与え、同時に日本語のカイゼンも広く知られることになったのです。
若者はエスプリカイゼンでブレイクスルーを目指す?
何か新しいことに挑戦するときは不安を抱えるものです。うまくいくかわからないけれど、できるかもしれないと勇気をもって行動に移すときのマジックワードがエスプリカイゼンなのです。
ビジネスの分野の改善よりも詳細なメソッド化はされておらず、自己成長や自己啓発の言葉として気軽な感じで使われている印象です。
まとめ
フランス人は日本製品の質の良さだったり、日本人の勤勉さや親切さだったりと、良いところに目を向けている人が多いです。そして、フランスの若者は日本の漫画やアニメに親しん育ってきています。日本の ” 改善の精神 “ を、エンターテインメントの要素も加え、ドキュメンタリー作品として広めたインフルエンサーの影響は大きいのではないでしょうか。エスプリカイゼンは造語ですが、日本の言葉がフランスの若者に勇気を与える役割を担ってくれていると思うと嬉しいですね。
執筆 YUKO