もうすぐ読書の秋! フランスの9月を彩る「文学の新学期」

2025.09.02

8月後半になると、書店やスーパーでは新学期に必要な文房具などの特売コーナーができる

フランスでは9月になると、夏のバカンスで閑散としていた街が一気に活気を取り戻します。子供たちにとっては新しい学年の始まり。大人も異動や転職で新しい仕事を始めるタイミングです。ラントレ(La Rentrée:再開、新学期)の9月です。この時期はフランスの出版業界にとっても特別な意味を持ちます。今回は読書の秋にあわせて、出版業界と文学の「ラントレ=新学期」に関してご紹介します。

 

文学のラントレ

9月は日常の再開であるとともに、政治や経済・文化のあらゆる分野で新しい動きが芽吹く、フランスにとっては大きな節目の時期です。とりわけ文化的に注目を集めるのが Rentrée Littéraire(文学の新学期)です。

フランスでは毎年9月に、小説やエッセイ・詩集などあらゆるジャンルで数百冊にのぼる新刊が発表され、書店にずらりと並びます。新聞や雑誌は特集を組み、テレビの文化番組でも作家が次々と登場します。街全体が文学の話題で沸き立つのがフランスの9月です。

文学賞の選考と発表が相次ぐフランスの秋

なぜこれほどの出版ラッシュが起こるのでしょうか。その理由のひとつに、秋から年末にかけて権威ある文学賞の発表が相次ぐことがあります。世界的にも有名なゴンクール賞(Prix Goncourt)をはじめ、ルノード賞(Prix Renaudot)、フェミナ賞(Prix Femina)、メディシス賞(Prix Médicis)など多くがこの時期に選考を実施し、11月初旬に受賞者が発表されます。受賞作は間違いなくベストセラーとなるため、選考に間に合う9月に新刊を出すかどうかで、その後の収益が大きく変わってくるのです。

日本でも芥川賞や直木賞の発表は話題になりますが、それと比べてもフランスにおける文学賞や書評の影響力は桁違いに大きいように感じます。新聞の一面で文学賞の候補作が紹介され、テレビ番組でも作家のインタビューが流れます。

政治や経済と肩を並べて小説が語られるあたり、フランス社会で読書は単なる趣味にとどまらず、市民生活や知的議論に深く組み込まれているようにも思います。

毎年ゴンクール賞とルノード賞の選考と発表の会場となるパリのレストラン、Drouant

 

フランスの出版業界

電子書籍や動画配信の台頭で読書人口の減少が指摘されるのは、日本もフランスも同じです。2024年にはフランスの書籍出版市場の規模は欧州第2位を維持していますが、出版冊数に関しては減少が続いています。出版社の数が年平均1.4%のペースで減少しているとの統計もあります。

全国チェーンの書店、Gibert Joseph

売れるジャンルにも変化が見られます。特にコロナ禍には、日本のマンガやバンドデシネ(bande dessinée、フランスのコミック)市場が急成長、年間販売冊数が2019年の約4,840万冊から2021年には約8,720万冊へとほぼ倍増しています。

その背景には、文化・芸術の復興のためにフランス政府が若者約80万人に配布した300ユーロの「Pass Culture(文化活動クーポン)」の多くが漫画の購入に充てられたことがあると考えられています(Pass Cultureに関しては過去記事を参照)。

パリにも3店舗あるBook Off

 

活気づく「読書の秋」

電子書籍や漫画に押され気味のフランス出版業界ですが、9月に書店に足を踏み入れると「文学のラントレ」の熱気を肌で感じることができます。特設コーナーに新刊が山のように平積みされ、出版業界の活力を象徴しているようにも思えます。

また、無名の新人作家が一夜にして文壇のスターとなることもあり、その一種のドラマ性もこの「文学のラントレ」を特別なものにしているのかもしれません。

フランスの「読書の秋」がまもなく始まります。

執筆:Takashi

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