11月も後半になるとフランスではクリスマスに向けた準備が始まります。クリスマス商戦のCMが目立つようになり、アドベントカレンダーやクリスマスの飾りが店頭に並びます。そして街なかでは趣向を凝らしたイルミネーションがいろいろなところで見られるようになります。今回は今年2024年のパリのクリスマスイルミネーションの様子をお届けします。
「世界で一番美しい」シャンゼリゼ通り
クリスマス時期のシャンゼリゼ通り
パリのイルミネーションで最も有名なのはシャンゼリゼ通りです。毎年11月中下旬の日曜に点灯式が行われ、1月初旬まで「La plus belle avenue du monde(世界で一番美しい通り)」と自称する通りが一層華やかになります。
点灯式は毎年有名なゲストが登場し、テレビ中継されるほどの一大イベントになっています。今年のゲストは、パリの今年一番のイベントであった五輪の実行委員長トニー・エスタンゲ(Tony Estanguet)氏。パリのイダルゴ市長(Anne Hidalgo)やシャンゼリゼ通りのあるパリ8区の区長、シャンゼリゼ商工会会長らとともにイルミネーションの点灯ボタンを押しました。
DJの音楽で観客がクラブのように踊り出したかと思えば、アマチュアバンドによる演奏に合わせてオーシャンゼリゼを大合唱したり、イダルゴ市長が壇上でスピーチを始めると一部がブーイングをしたり、機材の不調で時々何も聞こえなくなったり…。良くも悪くもフランスらしくのんびりとした、肩肘張らないイベントでした。
ちなみに、パリ8区長のJeanne d’Hauteserre氏は中華・ベトナム系の女性で、ベトナム戦争の時にフランス本土に移民してきたとのこと。2014年以来長きにわたって区長を務めています。
点灯式でのエスタンゲ氏(ステージ中央)とイダルゴ市長(ステージ右端)
華やかなモンテーニュ通りとディオール本店
シャンゼリゼ通りにも負けず劣らず派手なイルミネーションで毎年話題になるのが、シャンゼリゼ通りと交差するモンテーニュ通り。名だたるブランドの路面店が並ぶことで有名ですが、その華やかなイメージを具現化したようなイルミネーションで、日が暮れてからも昼間のような明るさです。
モンテーニュ通りの華やかさはシャンゼリゼ通りに勝るとも劣らない
その中でも特に目立つのが、30番地のディオール本店です。毎年どこまでが建物の壁なのか分からないないほどの飾り付けがなされ、それを見に来た人だかりが道路にまで広がって車が渋滞します。今年はやはりパリ五輪を意識したのでしょうか、パリのモニュメントをモチーフにした飾り付けがなされています。
サントノーレ通り・シャネル本店とエルメス本店を比べてみる
モンテーニュ通りと並ぶ高級ブランド街のサントノーレ通りも華やかに飾り付けられます。ただ、通りよりもそれぞれのお店がイルミネーションをしている印象で、趣向を凝らしたいろいろな飾りつけを見ることができます。
シャネル本店は建物自体がプレゼントの箱のようにラッピングされていて、道行く人の誰もが写真を撮っています。一方、エルメス本店は比較的控え目な飾り付けで、気付かずに通り過ぎてしまうほど。それぞれのメゾンのイメージやコンセプトを反映しているようで、比較するのも面白いかもしれません。
百貨店の飾りつけも見逃せない Grands Magasins
オペラ座北側のエリアも、クリスマスの飾り付けでは見逃せません。ここは百貨店の二大巨頭、ギャラリーラファイエットとプランタンの本店が並ぶことから、通称「Grands Magasins(大規模店舗街)」と複数形で呼ばれています。
オペラ座のほかルーブル美術館やモンマルトルの丘など主要観光地にも近く、ここに来れば手に入らないものはないと思えるほどのショッピングエリアです。
ギャラリーラファイエットのクリスマスツリー
通りのイルミネーションやショーウィンドウの飾りつけもさることながら、ギャラリーラファイエット本店にあるネオビザンチン様式のガラスのドームに吊るされるクリスマスツリーが毎年話題になります。今年は創業130年ということで「130回目のクリスマス」と銘打たれていますが、ツリー自体はこれでも例年よりシンプルな印象です。
歴史と格式あるヴァンドーム広場
Grands Magasinsから歩いてすぐのヴァンドーム広場も、この時期のイルミネーションは非常に華やかです。
広場の中心には、ナポレオンがアウステルリッツの戦いで敵から巻き上げた大砲を溶かして作ったとされる記念碑が建っています。もともとルイ14世がその治世を体現する華やかな広場を作るというアイデアで設計され、周囲にはフランス王政期の建物が並ぶ美しい場所です。
夕暮れのヴァンドーム広場
広場は音楽家のショパンが亡くなった12番地、司法省がある13番地、パリで最高級ホテルのひとつとされるリッツが入る15番地などに囲まれ、歴史と格式があふれています。色の統一された上品なイルミネーションは、この広場の格式を表現するかのような落ち着きが感じられます。
小さな通りの飾りつけも
小さな通りでもイルミネーションが付けられることが多く、控えめながら趣向を凝らしたものも見られて好感が持てます。有名な通りは飾り付けが派手すぎて少ししんどい…という時には、少し脇道に逸れた通りを散策すると、また新しい発見があるかもしれません。
普通の通りの控え目な飾り付けも好感が持てる。写真は16区ヴィクトル・ユーゴー通り
見どころはセーヌ川の右岸に多い?
記事を書いていて気付いたのが、今回ご紹介したエリアはすべてセーヌ川の右岸(川の北側)であるということ。右岸に有名なお店が、左岸に有名な大学や研究機関が集まっていることから、パリでは「右岸ではお金を使い、左岸では頭を使う」とよく言われます。クリスマスの飾りひとつとってもそれが分かります。気候変動対策のパリ協定が締結された街であることが信じられないほど華やかなイルミネーションは、この時期にパリに来たら一見の価値があると思います。
執筆 Takashi