フランス 各地で猛暑対策 緑化、日陰、噴水、有効なのはどれ

2023.07.18

フランス各都市で猛暑対策

写真はレンヌの旧証券取引所と広場(Palais du Commerce)

2023年7月18日(火)、本日、南仏で最高気温が40℃を超える予報が出ています。フランスの都市部では、夏の猛暑対策として様々な試みが行われていますが、果たして体感温度を下げるのに有効でしょうか?

 

ホコ天にカバーで日陰、広場に噴水器、鉢植えの木…

ブルターニュ地方(Bretagne)の都市、レンヌ(Rennes)では、植林が不可能な町の中心にあるショッピング通りにプラスチックの布を吊り下げて覆い、南西フランスのトゥールーズ(Toulouse)では、キャピトル広場(Place du Capitole)に鉢植えの木を並べ、西フランスのナント(Nantes)市では、コメルス広場(place du Commerce)に噴水を作るなど、各都市が猛暑対策を競い合っています。

しかし、これらの試みは本当に体感温度を下げるのに役立っているのでしょうか?

2018年にクールスケイプ(Coolscape)という都市温暖化対策プロジェクトを開始した都市建築気候(Ambiances Architectures Urbanités)の専門家、イグナシオ・ルケナ=ルイス(Ignacio Requena-Ruiz)氏は、各都市の試みに対し「理想はこれらの対策を大規模に行うこと」だと言います。

なぜなら、何もしないで手をこまねいていれば、人々はクーラーの効いた屋内にとどまり、集いの場がなくなって、「街」がその役割を果たさなくなり廃れていくからです。

街のクールダウン、4つのカテゴリーで最も効果的なのは?

都市の冷却化の試みは、大まかに4つのカテゴリーに分かれています。

一つは、空間の緑化により、木陰を作り、草木による自然な湿度の補給です。二つ目は噴水などの設置による水による冷却効果、三つ目は巨大なカバーなどによる人工的な日よけの設置、そして四つ目は熱を吸収しない素材の使用によるものです。

ルイス氏ら専門家たちは、気温だけでなく地面の温度、風、日差しなどの計測が可能な機器で各都市を計測した結果を分析し、その場を通る人の体感温度などを計算しました。

ナント市、人口滝や人口並木道

計測の結果、ナント市内の植物園内に作られた高さ25メートルの人口滝は、体感温度を6℃も下げることがわかりました。

同市はまた、ロワール川(Loire)の川畔に全長600メートルの人工散歩道を作り、幅1.5メートルぐらいの道の両側を巨大な植木鉢に植えた木々で囲んでいます。

数年前から毎年夏の間だけ作られるこの散歩道は、体感温度を3、4℃ほど下げる効果があるだけでなく、高齢者を含め市民の憩いの場になっています。

パリ郊外デファンス地区、白い地面「不評」

パリ西部近郊にあるオフィス街、高層ビルが立ち並ぶエスプラナード・ド・ラ・デファンス(Esplanade de la Défense)地区では、新凱旋門(Grande Arche)前はコンクリートでできた広場になっています。

暑さ対策として地面を熱の吸収を抑える明るい色に塗りかえたところ、逆に光の反射がきつく「眩しい」と利用者から不評を買ってしまいました。。

トゥールーズ、巨大な広場にたった28本の木

トゥールーズの観光名所としても有名なキャピトル広場(place du Capitole)、木陰の全くないこの広場の緑化は簡単ではありません。

市はここに大きな植木鉢に入れた28本の木を設置しました。

木造りの箱に入った植木は「美観」には成功したかもしれませんが、広場の面積を考えると「砂漠に垂らした一滴の水」と地元の人たちに酷評されています。

キャピトル広場の石畳にはオクシターヌ十字(la croix occitane)と呼ばれる、この地方の紋章の装飾が施され、その奥には歴史的建造物として国の指定を受けている、キャピトル(Capitole)(現市庁舎)があります。

フランスではこういった歴史的文化遺産の改装には文化省指定の建築家(architecte des bâtiments de France)への打診が必要になります。

キャピトルを植木で隠すことは到底許可されそうにありませんが、問題はこれだけではありません。

そもそもこの広場の地下は駐車場になっており、木を植えること自体が不可能なのです。

 

狭い道、木陰のある広場、昔に戻るしかない?

都市気候の専門家ルイス氏は、分析の結果から水の使用が「涼感」を与えるには最も効果的としつつも、干ばつによる水資源の希少さからも、木や他の人工的な素材でより日差しを遮る日陰を作るなど、対策を組み合わせることでより高い効果が期待できるといいます。

同市はさらに、これからは昔の都市づくりに逆戻りする必要があると説いています。

中世のフランスの街は道幅が狭く、各通りは広場で結ばれていていました。

こうすることで、道路脇の建物が通りに日陰を作り、広場には木が植えられ噴水やベンチがあるので、住民はこういった場所に集まって涼んでいました。

猛暑対策は都市の構造にもより、劇的な解決策はないものの、木を植木鉢に入れて地面においたり、川や公園など自然の近くに人工的な設備を作るといった「意味のないこと」は住民に受け入れられないからやめるべき、とルイス氏はコメントしています。

執筆:マダム・カトウ

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