フランス大統領マクロン再選も不満噴出、6月下院選は苦戦必須

2022.04.26

マクロン大統領再選も、不満噴出で下院選苦戦予想

4月26日(火)、先日24日(日)に行われたフランス大統領選挙の決選投票で58.54%を獲得し、極右ルペン氏(41.46%)を倒して再選を果たしたマクロン大統領ですが、前回に続き「反極右」「反ルペン」という「反対票」のおかげで当選したと言われています。すでにパリを始めフランス各地で反対デモが行われるなど、フランス社会の根深い不満が噴出しており、6月に行われる下院選で今回支持を伸ばしたマクロン氏率いる国民前進党(LREM)が過半数を取れるかが焦点になっています。

 

「反極右」で当選?、「嫌々ながら」マクロンに投票した人たち

心理カウンセラーで33歳のトマ(Thomas)は、決選投票の24日の朝、まず「イヤイヤながら」マクロン氏に投票し、夕方の結果発表で同氏が当選すると「マクロン辞職!」を叫びながらパリの街を行進していました。

トマは、ルペンは「マクロンよりもっとひどい」から当選を阻止するためにマクロンに投票をしたと言います。

マクロン当選で極右阻止ができると、今度は同氏の「行きすぎた改革や考え方」を止めなくてはならないから、新大統領の任期中5年間は「大いにデモに参加する」と、メディアのインタビューにコメントしました。

「極右」を大統領選で阻止し、マクロンの「リベラリズム」に道で抗議

やはり極右阻止のためにマクロン氏に投票したという30代の看護師ジュスティーヌ(Justine)は、経済相ルメール(Bruno Le Maire)氏が昨日「憲法49-3条(注)を行使してでも定年改革を行う」と発表したことを受け、当選したと思ったら「もう図に乗っている」から「頭を冷やさせないと」いけないので、これからの5年間は「公道に出て抗議」することに精力を注ぐとしています。

2児の母でもある彼女は「定年改革をやめさせなければ、私の子供達の頃には定年が80歳になってしまう」と将来に大きな不安を感じ、社会保障の「既得権」を守るために極左を支持しています。

(注)フランスの首相に認められる、議会の承認なしに法案成立する権限

 

フランス社会、3つのブロックに分断、中道、極右、極左

今回の大統領選で、フランス社会はマクロン氏が代表する「中道派」を挟み、マリーヌ・ルペン(Marine Le Pen)氏が代表する「極右」、そしてジャン=リュック・メランション(Jean-Luc Mélenchon)氏が率いる「極左」という3つのブロックに分断されていることが明らかになっています。

第一回投票の結果を見るとわかるように、得票率の7割を占めた上位3人の結果は、1位通過のマクロン氏(27.84%)、2位のルペン氏(23.15%)、3位のメランション氏(21.95%)でほぼ3分割されています。

伝統的2大政党の不在、分断加速

戦後のフランスの政権を握ってきた伝統的な2大政党、右派の共和党(Les Républicains: LR)と左派の社会党(Parti socialiste: PS)は、今回の選挙で候補者がそれぞれ数パーセントしか得票できず「崩壊寸前」とまで言われています。

パリ第八大学で社会科学の教鞭をとるソフィー・ジュエル(Sophie Jehel)氏によると、この2大政党の不在はフランスの社会に「対立の構図」を生み出しています。

つまり「ネオリベラルな改革」を今まで(過半数のため)議会で「反対派の十分な説得なしに」多数決で推進してきたマクロン氏の「自称中道派」と、反対意見を「デモ」という形で訴えるしかない極右と極左は、十分な議論不在から「対立」するしかないわけです。

ジュエル教授は下院選後にこの「対立」が改善するには、議会が再び議論の場となり、反対派の意見を汲み取り「十分な説得が行われるようになる必要がある」と述べています。

コロナで消えた「黄色いジャケット運動」再び?

また、ジュエル教授はマクロン氏の再選により、現大統領に象徴される「リベラリズムやグローバル化」を支持する中流階級以上の「勝ち組」と、それに取り残され「負け組」だと感じる労働者階級の間の溝は「決定的になった」と考えています。

「負け組」のフランス人は、特にこの2年間のコロナ禍と気候変動問題で「変化について行くしかない」という「脅迫観念」に駆られ怯えています。

同氏は、5年前に長期にわたって続いた反政府運動「黄色いジャケット運動」が「再燃してもおかしくない」と述べています。

 

下院選で過半数狙う「極左」メランション氏、「オレを首相にしろ!」

フランスでは大統領選出後、新たな内閣が大統領の任命によって成立しますが、大統領選から2ヶ月後に下院選が行われ、そこで過半数を獲得した政党から再度首相が指名され内閣を形成します。

そのため、再選したマクロン大統領も自らの公約を下院で成立させるには、下院選で過半数を取る必要があります。

大統領選で敗退したものの「自己ベスト」の好スコアから内閣入りを目指すメランション氏の党「不服従のフランス党(La France insoumise)」も、ルペン氏率いる「国民連合党(Rassemblement national)」も一党で過半数議席を獲得することが困難なため、いずれも他党と組む必要に迫られています。

不服従のフランス党は、すでに民衆連盟(Union populaire)党を立ち上げ、共産党(PCF)や大統領選で対立したヨーロッパ・エコロジー党(EELV)に参加を訴えています。

これから6月の選挙まで各党の動きが注目されます。

執筆:マダム・カトウ

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