フランスのパスポート、ID(刷新前)
3月22日(火)、フランス人のパスポートや身分証明書(ID)申請のための予約が自治体により、2〜4ヶ月後にしか取れず、問題となっています。フランス国外への旅行を計画していた人の中には、パスポートが間に合わず旅行を断念する人も出ています。
コロナで激減のパスポート申請、行動規制緩和で急増
2020年3月のロックダウンから2021年にかけ、フランスのパスポート申請はコロナ禍以前に比べ39%も減り、ID申請も18%減っていました。
2021年の春になり、コロナ第4波の感染減による行動制限緩和が行われると、海外への旅行が再開しパスポートやIDの延長申請が急激に増え始め、自治体の処理が追いつかなくなってきました。
ブレグジットでイギリス行きにもパスポートが必要に
ジスレン(Ghislain)さんは、パスポートの取得に8ヶ月もかかっています。
「パリ近郊のヴァンセンヌ(Vincennes)市で申請したら、書類不備があり却下されたのですが、次の予約が取れたのは3ヶ月半も先でした。」
その間にジスレンさんはフランス南東部のアヌシー(Annecy)に引っ越すことになり、結局そこで申請を一からやり直しましたが、申請後の受け取り予約は5ヶ月後にしか取れませんでした。
パスポートの取得を待つ間、彼女はイギリスへの渡航を2回断念しています。
ブレグジットでEUを脱退するまで、イギリスへ行くには他のEU加盟国同様フランスのIDがあればよかったのですが、脱退後はパスポートが必要になっています。
取得にかかる時間、昨年の「倍」
フランスのパスポートやID発行を行う(Agence nationale des titres sécurisés :ANTS)のアンヌ=ガエル・ボドゥイン(Anne-Gaëlle Baudouin)氏によると、「ジスレンさんのようなケースは稀」としつつも、2021年の3月には申請予約可能日は全国平均で11.5日後でしたが、今年の3月には27日後になっています。
さらに申請日から受領までの時間はIDで25日、パスポートで23日かかります。
この日数はあくまでも全国平均で、パリや近郊など人口の多い都市では待ち時間はさらに長くなっています。
毎年3月が申請のピーク
ボドゥイン氏によると、毎年3月が申請のピークになっています。
夏のバカンスシーズンが始まる7月に海外旅行をする人がこの頃からパスポート申請を始めるためです。
またフランスでは学年末の6月に学校で卒業資格などの試験が行われますが、試験の際に有効期限内の身分証明書の提示が必要になる事も3月の申請が混雑する理由となっています。
アメリカへの旅行、昨年11月から解禁
コロナ禍で外国人の観光客を受け入れていなかった国々が、昨年の後半から受け入れを始めたことも今年に入って申請が増えた原因の一つです。
2022年に入り、過去2年間行けなかったアメリカ方面など、遠方への旅行意欲が盛んになっています。
役所の職員がコロナで病欠
昨年11月末から今年の2月にかけて、オミクロン株が猛威を古い、各自治体でも職員やその子供の感染で欠勤が相次ぎ、手続きがさらに遅れる原因になっていました。
ロックダウン中も行動規制中も市役所は開いていましたが、閉まっていると勘違いしている人も多かったため、行動規制が解除されてから一気に手続きに訪れる人が増えてしまいました。
身分証明カードが新しく
フランスの身分証明書の有効期限は10年でしたが、2014年に手続きなしで15年に延長されています。
2014年以前に取得した人のIDの有効期限がちょうど切れはじめたことも「今年の申請増に繋がっている」とボドゥイン氏は分析しています。
また昨年8月2日には、それまでの身分証明のカードが刷新され、ICチップ入りの新しいカードが発行されました。
従来のカードより小さくクレジットカード大の新しいIDは財布に入りやすく、デザインも一新され国境での手続きにも便利になっています。
そのため、いち早く新しいカードに変えようとする人も出ています。
有効期限内の旧カードは更新する必要はありませんが、転居や紛失、盗難、また海外旅行(EU内)に行くことを理由に新しいカードを申請することができます。
指紋情報も入っているフランスの新しいIDのチップはセキュリティが強化されています。また、空港でのパスポートコントロールなど、国境管理の自動化も進んでいます。
2031年以降は新しいIDカードの所持が義務づけられ、旧IDは無効となります。
執筆:マダム・カトウ