9月15日(火)、コロナ禍でスタートアップ企業も明暗が分かれています。既存の市場が崩壊してビジネスプランの見直しを図らざるを得なくなった企業もある中、3月から約2ヶ月におよんだフランスのロックダウン中に商機を見出した物流系スタートアップ、スペースフィル(SpaceFill)は投資家の注目を集めています。
倉庫探しのプラットフォーム、スペースフィル
スペースフィル社は2018年、親が代々倉庫業を営むというマキシム・ユザール(Maxime Huzar)氏とカンタン・ドリヨン(Quentin Drillon)氏、グスタヴ・ロシュ(Gustave Roche)氏の三人の若者によって創設されました。
スペースフィルとは、複数の民間倉庫の空き状況を確認、予約できるプラットフォームです。
従来の仕組みでは、在庫をストックする倉庫が必要な企業は、倉庫会社に個別に空き状況などを確認する必要がありましたが、スペースフィルを使うことにより、1つのプラットフォームにアクセスするだけで瞬時にどの倉庫が空いているかわかるようになります。
ユザール氏は、「空き状況だけでなく、倉庫の管理システムと接続したり、保険との連携も可能なため、顧客は我々1社とのみ契約すればいいことになります」と、その便宜性を強調しています。
ロックダウン中、「運転手が手配できない」などの事情もあり物流は混乱をきたし、倉庫業界も「商店閉鎖で突然在庫が増え、倉庫スペースが足りなくなった」「商品が届かないため空きが増えた」という状況に陥っていました。そのため、この期間に多くの企業がスペースフィルと契約し、その利便性からロックダウンが解除された現在もサービスを利用し続けています。
《倉庫はコスト》から《イノベーション》に
ユザール氏はまた「ロックダウンを機に、いくつかの企業は倉庫を単なる費用ではなく、イノベーションを起こす源として見直している」と語っています。
ロックダウンでオンライン需要増、物流のスピードUP
例えば、ベッドを製造するある企業は、フランス国内3ヶ所に倉庫を持っており、そこからフランス中に配送していました。
3月からのロックダウンでオンライン注文が急増しましたが、運送会社の確保の難しさから配送に時間がかかり、納品が大幅に遅れていました。そこでこの会社はスペースフィルを利用し、在庫の一部をフランスの複数の大都市近辺にある倉庫にあらかじめ移しておくことで、オンライン需要に迅速に対応できるようになりました。
保険も全ておまかせ、フランス全国20km毎に倉庫一つ
スペースフィルが開発したシステムを利用すると、自社の倉庫もそれ以外の倉庫も同じように利用出来るようになります。
また、保険大手アクサ(AXA)と連携して、他社の倉庫を利用した場合も同じ条件でかけられる保険を作ることで、倉庫手配に必要な「複数業務の一本化」が可能になり、経費削減にも繋がります。
スペースフィル社は、フランスではすでに3000の倉庫と契約があり、これは20キロメートルに1つの割合となります。
700万ユーロの資金調達、5年以内に欧州市場独占狙う
スペースフィルが今月調達した資金、700万ユーロ(約8億8000万円/1ユーロ=約125.73円)の一部を出資した投資会社イディンベストIdinvest社の担当者は、「倉庫業はバラバラで統一されていないため、プラットフォームによる仲介業はチャンスですが、今のところ誰も参入していません」とスペースフィルのポテンシャルに触れ、さらに「早い時期に海外進出してマーケットリーダーの地位を確保すべき」と大型出資の根拠を説明しています。
スペースフィル社は近々50人ほどを新規に採用し、まずはドイツに拠点を設立することが決定しています。
スペースフィル社のサイトはこちら
執筆:マダム・カトウ