2月6日(木)、ワインの原料であるブドウの一部の品種が、地球温暖化に伴い現在のワイン生産地では栽培不可となる可能性が高まっています。
気温2℃上昇で、世界で現存のブドウ畑5割が消滅
「温暖化で気温が2℃上がると世界のブドウ畑の56%、4℃上がると85%が消滅する」と、米国科学アカデミーは警鐘を鳴らしています。
アカデミーの最近の論文発表によると、「米国カリフォルニア、イタリア、スペインなどワイン生産地のうち元々温かい国では、ピノ・ノワール(pinot noir)種やグルナッシュ(grenache)といったブドウ品種の生産面積が大幅に縮小」されてしまいます。
一方、ドイツではこれらの品種の生産を大幅に拡大することが可能になります。
ブルゴーニュワインをノルマンディーで生産?
フランスワインの代表的な生産地の一つ、ブルゴーニュ(Bourgogne)地方の赤ワインは、主にピノ・ノワールやガメ(gamay)種で作られています。
今回の発表では「フランスワインはピノ・ノワール種の生産面積を50%近く増やすことが可能」と、数字だけみるとポジティブな結果になっていますが、生産地をブルゴーニュ地方から北フランスのノルマンディー地方に移す必要があります。
論文作成者の一人、イニャーキ=ガルシア・デ=コルタザール=アタウリ(Iñaki Garcia de Cortazar Atauri)氏は、「ワインの原料となるブドウ品種の生産地が北上するという事実は目新しいことではなく、15年前からわかっていること」と、温暖化の農業への影響が確実に進んでいる現状を説明しています。
温暖化でヨーロッパから消えゆく品種
ブドウの品種別に見ると、欧州で栽培可能面積の減少と増加を考慮した結果もっともプラスになる品種は、現在南西フランスワインに多く使われているグルナッシュ種、次にシラー種となります。
フランスワインの象徴でもあるボルドーワインに使われるメルロー(merlot)種、カベルネ・ソーヴィニョン(cabernet-sauvignon)種は、気温上昇が2℃まではプラスになります。ピノ・ノワールや白ワインの代表的品種、シャルドネ(chardonnay)も2℃までなら辛うじてプラスですが、気温上昇が4℃を超えると、これらの品種は6割近い生産面積を失います。
つまり、ブルゴーニュ地方など現在の産地で、現在と同じ品種のブドウを原料としたワインを作り続けることが困難になってきます。
イギリスワインは《ロマネコンティ》にはなれない?
では実際に、ワインの生産地を移動させることができるのでしょうか?
同氏はまた「ノルマンディー地方でワインの生産が可能になったとしても、実際そういった動きになるとは考えにくい。ワインの生産というのは、古くからその地方に根付いた伝統文化でもあり、そこに経済的価値も見出されている」ことから、「例えば、イギリスで作られたワインがフランスの伝統ある一流ワインより有名になることないだろう」と、ワイン独特の付加価値を築き上げることの難しさを語っています。
注)ロマネ・コンティ(Romanée-Conti):ブルゴーニュワインを代表する、特級《グラン・クリュ》(grands crus)格付けされたピノ・ノワール種のワイン。世界でもっとも高価なワインの一つ。
執筆:マダム・カトウ