2月7日(金)、フランス景気観測局(OFCE:Observatoire français des conjonctures économiques )は2020年の景気動向の発表で、全体の購買力は上がるものの低所得層はその恩恵を受けないと予測しています。
フランスの世帯7割は購買力が上昇
2020年フランス国民全体の収入は51億ユーロ(約6131億円)、また世帯当たりの収入は180ユーロ(約21,600円)増えると予想されています。
その要因としては下記が挙げられます:
- 所得税減税
- 世帯全体の8割に住民税免除
- 残業手当への非課税(給与所得者の7割近くが恩恵を受ける)
中間所得層がもっとも恩恵を享受
今年購買力がもっとも上昇すると予想されているのは、月々の所得が2090ユーロ(約250,000円)〜2230ユーロ(約267,000円)の層で、OFCEの予想によると最も多い世帯では年610ユーロ(約73,000円)も収入が増えます。
低所得層の半分は《負け組》 特に独身失業者
2018年11月に始まり1年近く続いた《黄色いベスト運動》を鎮火させるために政府がとった購買力向上政策により、最低賃金は90ユーロ(約10,800円)上昇しています。また、低所得労働者向け手当の支給を個人事業主にも拡大し、受給者は2018年には410万人、2019年にはさらに120万人追加されました。
それにも関わらず、今年は低所得層の購買力が減ると予想されています。
理由としては:
- 住宅援助(APL:aides personnalisées au logement)の支給ルール見直し(現在650万人が受給)
- 失業手当(assurance-chômage)の支給ルール見直し(2019年11月時点で約260万人が受給)
が挙げられています。
新ルール導入にともない、住宅援助の受給者は約120万人減少します。
失業手当については、2019年に可決された一部見直しで受給資格が拡大され、支出は年間4億4千万ユーロ(約529億円)増えるものの、全体では約130万人の受給者が減ると予想されています。
さらに今年予定されている再度の見直しで、フランス政府は今後3年間で約45億ユーロ(約5409億円)の節約が可能と試算されています。
ルール改正でもっとも不利なのは独身の失業者で、2020年の購買力 はマイナス0.2%、月収が約40ユーロ(約4800円)減るとの見通しです。
失業手当より職業訓練
マクロン政権は失業者を貧困から救済するため、失業者の再雇用を支援する職業訓練に力を入れた新プロジェクトを稼働させようとしていますが、こういった施策は当然景気観測局の数字には反映されません。
政府は今回の発表に不服を示し、マクロン政権発足から行われてきた諸々の改革により、フランスの最低所得層の10%に当たる世帯の購買力は2.3%上昇したと反論しています。
1ユーロ=120円
執筆:マダム・カトウ