薬物を投与し、記憶を書き換える……。そんなサイエンス・フィクションのようなことが現実の世界で起こりました。2月8日(土)現地の報道によると、パリ・サクレー脳科学研究所(Institut des neurosciences Paris-Saclay)の研究チームがモルモットにオキシトシンを含む薬物を投与したところ、トラウマとなっている記憶が現れなくなったとの研究結果が発表されました。
オキシトシンの投与により心的外傷後ストレス障害の兆候が消えた
パリ・サクレー脳科学研究所が行ったこの実験では、最初にモルモットの一群に心理的外傷を与えました。その半分のモルモットには典型的な心的外傷後ストレス障害(PTSD)の兆候が表れ、残りの半分のモルモットはストレス耐性があり、平常時と変わりませんでした。
1か月後にこれらのモルモットすべての脳に、不安を鎮める効果があることで知られているオキシトシンを投与し、その後にトラウマとなっている記憶を思い出させる刺激を与えました。
実験の結果は
研究チームの狙いは、トラウマとなっている記憶を引き起こす刺激を感情的な面から与え(専門用語で「感情価(valence)」と言います)、オキシトシン投与によりモルモットの頭の中に新しい記憶を作ることでした。実験の結果、古い記憶がこの感情面での新しい記憶に取って代わり、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の兆候が表れていたモルモットの80%以上からはその兆候が完全に消えたということです。
今回の実験の対象となったのはモルモットですが、将来研究が進んでこれが人間にも適用され効果が認めれるようになれば、心的外傷後ストレス障害に悩む人々のためにこの薬が実用化される日が来るかもしれません。
執筆・Shunsuke