9月26日(木)、パリおよびパリ近郊、イル=ド=フランス地域圏(Ile-de-France)の公共交通機関を管理する、イル=ド=フランス=モビリテ(Ile-de-France Mobilités :IDFM)は、今年6月に開始したスマートフォンのアプリで切符や定期券を購入できるサービスにより、紙切符の廃止を加速し2020年半ばの全廃を目指しています。
切符の代わりにチャージ式カード《ナヴィゴ・イージー》
今年の6月より《ナヴィゴ・イージー》(Navigo Easy)と呼ばれるチャージ式のカードが2ユーロ(約236円)で販売されています。
このカードを利用すると、切符1枚からチャージが可能で、さらに《カルネ》(carnet)と呼ばれる10枚綴りの割引チケット、1日券、オルリー(Aéroport de Paris-Orly)空港やシャルル・ド・ゴール(Aéroport de Paris-Charles-de-Gaulle)空港行きのバス、オルリーバス(Orlybus)やロワッシーバス(Roissybus)チケットもチャージできます。
イル=ド=フランス地域圏知事で、イル=ド=フランス=モビリテ会長でもある、ヴァレリー・ペクレス(Valérie Pécresse)氏は、「この3ヶ月ですでに数百万枚の紙のチケットが減りました」と、チャージ式カードがすでに支持を得ていることを説明しました。
ただ、家族旅行でパリを訪問する場合、カルネなら10枚を分けあって使うことができましたが、このカード式に移行すると各自カードを2ユーロ(約236円)で購入する必要があります。
スマートフォン改札も開始
NFCと呼ばれる非接触式技術を利用し、スマートフォンで改札を通過することもできます。《ナヴィゴ・イージー》同様、空港行きも含むチケットがスマートフォンにチャージできます。
今のところスマートフォンの場合、フランスのオランジュ(Orange)社または系列のソシュ(Sosh)のSIM(シム)カードか、サムスン(Samsung)社の対応15機種のみで利用が可能です。
アプリ《ヴィア・ナヴィゴ》をダウンロード、電源切れもOK
スマートフォン利用の場合、アプリ《ヴィア・ナヴィゴ》(Via Navigo)をダウンロードし改札でスマートフォンをかざすだけです。電源が切れていても利用できます。抜き打ちの検札時も、係員のもっている機械にかざすだけです。
イル=ド=フランス=モビリテ社によると、パリ及びパリ近郊の公共交通機関利用者の90%はスマートフォンを所持しており、うち80%はandroid(アンドロイド)ユーザーです。
また、サムスン社の発表によると、この地域でのサムスン製のスマホのシェアは50%を占めています。
現存の定期券《パスナヴィゴ》がアプリからチャージ可能
毎月月初めは、パリの地下鉄の改札付近で朝から定期券《パス ナヴィゴ》(le passe Navigo)をチャージする人の行列が絶えませんが、アプリ《ヴィア・ナヴィゴ》(ViaNavigo)の登場で駅に行かなくてもチャージすることが可能になりました。
つまりアプリで支払いを済ませ、《ナヴィゴ》をスマートフォンにかざすだけで《ナヴィゴ》にチャージが完了するわけです。
ちなみに、このチャージ機能はオランジュ社のSIMカードやサムスン製のスマートフォンに限らず、androidユーザーなら誰でも利用できます。
iPhoneの利用はアップル社と交渉中
現時点でアプリがandroidユーザーしか使えない状況について、ペクレス氏は「2020年にはすべての公共交通機関利用者にこのサービスを利用してもらうため、アップル社に再三協力を要請」しており、また同社も「パリおよび近郊の住民がandroidに移行するのを避けたいだろう」と述べています。
氏によると、今後数ヶ月以内には《アプリ無料ダウンロード》で、アップル社と合意する意欲を見せています。
今年の11月から、月々後払い方式も導入
利用者の電子化を促進するため、《ナヴィゴ・リベルテ・プリュス》(Navigo Liberté +)と命名されたカードが11月に導入されます。このカードを利用することで、1ヶ月に利用したパリ市内のバスや地下鉄料金を翌月15日に一括払いで引き落とすことができます。
割引チケット《カルネ》大幅値上げで廃止に拍車
紙の切符が10枚セットでお得なカルネは現在14.9ユーロ(約1758円)で、1枚1.9ユーロ(約224円)のチケットを一枚ずつ買うより割安になっていますが、11月1日より約13%、2ユーロ(約236円)値上げされ、16.9ユーロ(約1,994円)になります。
イル=ド=フランス=モビリテ社のディレクター、ローラン・プロブスト(Laurent Probst)氏は、「まずはカルネを廃止し、2020年半ばをメドに紙の切符を廃止したいと思っています」と、早急な電子化を進める意欲をみせる一方、「利用者を追い詰めることはしたくない、(全廃)時期は新しい利用方法がどれだけ支持されるかによる」と、紙切符の全廃には慎重な態度を示しています。
1ユーロ=118円
執筆:マダム・カトウ