24日(火)、フランスのタイヤメーカー、ミシュラン(Michelin)社が発行しているレストラン、ホテルの格付け本「ミシュランガイド(Le Guide Michelin)」で、自身のレストラン「ラ・メゾン・デ・ボワ(La Maison des Bois/森の家)」が最高評価の3つ星から一つランク下の2つ星に格下げされたのは覆面調査員が適正な評価をしなかったから、として、フランスの有名シェフ、マルク・ヴェイラ(Marc Veyrat)氏がミシュランを提訴した、とヴェイラ氏の弁護士が明らかにしました。(写真は記事内容とは関係はありません)
マルク・ヴェイラ氏
ヴェイラ氏は、これまでにミシュランガイドで最高評価の3つ星を3回、同じくフランスのレストランガイド「ゴ・エ・ミヨ(Gault et Millau)」で最高評価の20点を2回獲得し、ミシュランやゴ・エ・ミヨから複数回にわたり年間最優秀シェフの称号を与えられるなど、フランスを代表するトップシェフとして知られています。
ゴ・エ・ミヨでは、「完全など不可能である」との考え方から、20点満点が付けられることはまずなく、ヴェイラ氏の20点がいかに高評価を受けているかがうかがえます。
スキー事故で一度は料理をあきらめる
2006年に起きたスキー中の大事故の後、1年以上車いすでの生活を余儀なくされ、2009年2月には健康上の懸念を理由に、一度料理界から退くことを発表し、世間を驚かせました。
ラ・メゾン・デ・ボワで返り咲く
2013年9月、ヴェイラ氏は、フランス中東部に位置する、スイスとの国境のオート・サヴォワ(Haute-Savoie)県の標高1600メートルのクロワ・フリ峠(Le col de la Croix Fry)に、環境に配慮したホテルとレストラン「ラ・メゾン・デ・ボワ」をオープンさせました。
ミシュランの3つ星を獲得
このラ・メゾン・デ・ボワは、2018年版のミシュランガイドで3つ星を獲得しました。また、ゴ・エ・ミヨでも19点の高評価を付けられています。
この他、① Courtoisie(心のこもったもてなし)➁ Caractère(特色・個性のあるスタイル)③ Cuisine(質の高い料理)④ Charme(洗練され魅力あるスペース)⑤ Calme(落ち着きやリラックスできる場所)の5Cと呼ばれる厳格な基準をクリアした一流のホテル・レストランのみが加盟することが出来る、ルレ・エ・シャトー(Relais & Châteaux)の会員にもなっています。
ラ・メゾン・デ・ボワのホームページは→こちら←
2つ星に格下げ
ミシュランの3つ星を獲得してから、わずか1年後の今年、2019年の初頭に発行された第110版のミシュランガイドでは、一つ格下の2つ星にランクを下げられたことから、24日、ヴェイラ氏の弁護士が、ヴェイラ氏がミシュランガイドを適正な評価をしなかった、として提訴したと発表しました。
格下げの理由はチーズ?
ルブロション(Reblochon)やボーフォール(Beaufort)、トム・ドゥ・サヴォワ(Tomme de Savoie)などの地元産のチーズを使ったラ・メゾン・デ・ボワのチーズスフレに、イギリス産のチェダーチーズが入っているとミシュランの覆面調査員が誤解した、とヴェイラ氏は主張しています。
ヴェイラ氏は、チーズにいれたサフランの影響で、チーズが黄色くなったことを、調査員がチェダーチーズと勘違いした、と調査員を批判しています。また、「我々は毎朝、ニワトリの卵をとり、牛の乳を搾り、植物を摘んでいるんだ!」と怒りをあらわにしています。
ミシュランへの掲載中止要請をしたが
ヴェイラ氏はミシュランに対してラ・メゾン・デ・ボワの掲載を中止するよう要請しましたが、ミシュラン側は、「ラ・メゾン・デ・ボワの掲載をやめるつもりはない。我々の調査員がこの様に評価したのであれば、我々はそのままそれを掲載するまでだ」とヴェイラ氏の要請を拒否しました。
ヴェイラ氏はその後、およそ6カ月間うつ病に悩んだと主張しています。
ミシュランの評価は諸刃の剣か
ミシュランガイドが世間に与える影響は大きく、ここ最近では、日本でもミシュランに掲載された為に、今までの営業が出来なくなったと、星の返上を希望する店が出るなど話題になっています。
また、星を維持・獲得するために料理人たちが耐え難いストレスにさらされ、自殺者が相次いでいることや、レストランの評価が下がった場合にレストランに与える経済的、社会的信用の損失が計り知れないことから、本当にミシュランガイドの評価がレストランにとって良い影響与えているのか、問題視する声も上がっています。
執筆:Daisuke