9月に始まる新年度から、イル=ド=フランス地域圏(Ile-de-France)5つの職業高校で、落第防止のため始業を遅らせるという施策が試験的に行われます。
まずは5校でテスト、9時始業に
パリ郊外、イル=ド=フランス地域圏内のセーヌ=サン=ドニ県(Seine-Saint-Denis)から3校、ヴァル=ド=マルヌ県(Val-de-Marne)から選ばれた2校では、9月3日から始まる新年度から、まずは週に1回9時始業が導入されます。対象となる5校は普通科に職業科などを兼ねた高校、および職業高校です。
イル=ド=フランス地域圏委員会副委員長、高校担当のマリー=キャロル・シアンテュ(Marie-Carole Ciuntu)は、「始業時間が遅い日を増やし、今回の施策で出来るだけ学生の落第を阻止したい」と述べ、期待を示しています。
朝起きられない生徒達
今回の施策に向けレポートを作成した、地方評議会委員のキャリーヌ・フランクレ(Karine Franclet)氏は「始業時間を遅らせることで、遅刻常習犯の生徒達が定時に来て、授業に最初から参加できることを願っています。多くの生徒たちは朝なかなか起きれないうえ、イル=ド=フランスの通学時間は長いので遅刻する生徒が多いのです」と、今回の施策の動機について語っています。
今回の施策は特に職業高校を対象にしています。職業高校では、学科の専門性によっては遠くから通学する生徒も少なくないからです。
遅刻が落第の原因を作る
現在中学校長、職業高校の校長経験もあるフランクレ氏は、「生徒があまり遅く学校に到着すると、校内に入れてもらえなくなります。そうすると彼らは一日外をうろうろしてサボり癖がつき、仕舞いには彼らは学校に来なくなります」と、遅刻が落第や学業断念の原因になる現状を説明しています。
学校の終業時間は何時に?
今後、高校の始業時間を遅らせる施策が広まっていく可能性がある中、生徒の父兄たちの反応としては、セーヌ=サン=ドニ県の非営利団体、父兄会FCPE 93の代表の一人、アンヌ・ピエテール(Anne Pieter)氏は、「始業開始には賛成だが、その分終業時間が遅くなり、夜7時まで授業があるのは良くないのではないか」と、生徒の親達が始業時間の変更を手放しには喜べない可能性も示唆しています。
思春期特有の生活リズムに合わせる
「思春期は《生理的な遅れ》を伴います。つまり彼らの時間は1時間ずれているんです。つまり、朝1時間遅く起きて夜1時間遅く寝る。なので学校の始業時間を1時間遅らせることは理にかなっています」と、時間生理学者で教育心理学の教鞭をとるクレール・ルコント(Claire Leconte)教授は説明しています。
教授によると今回の施策により、早朝に訪れる思春期の若者のレム睡眠量を増やすことができます。睡眠中も脳が活動して覚醒しているレム睡眠は記憶に費やされるのです。
ただ、生徒達を朝ベッドから引きずり出すには、始業時間を遅らせる以外にもやるべきことはあるようです。
執筆:マダム・カトウ