11日(火)、パリを走っているトラム(Tramway)が遅すぎるとして、イル=ド=フランス交通機関利用者協会(Association des Usagers des Transports Ile-de-France/AUT Ile-de-France)のマルク・ぺリシエ(Marc Pélissier)代表が「我々は信号機よりもトラムを優先させる必要がある」と述べ、利用者から不満の声が相次いでいるトラムの状況改善を求める声明を発表した、と現地メディアが伝えました。
イル=ド=フランスのトラム
パリを含むイル=ド=フランス地域圏には現在、パリ郊外の北部を走るT1番線、パリ市内を環状で走るT3a番線、T3b番線をはじめとする10の路線があります。また、パリオリンピックが開催される2024年の前年までの開業を目指し、工事、計画が行われている路線も4路線あり、将来的には14のトラム路線がイル=ド=フランスの各地域を結ぶことになっています。
車道を走るトラム、専用レーンを走るトラム
この内、既に営業を行っているT11番線、計画中のT12番線とT13番線はトラム・エクスプレス(Tram Express)と呼ばれ、通常の電車と同じように専用のレーンが設けられていますが、それ以外のほぼすべての路線は、車道、もしくは車道に並行して敷かれた線路を走っています。そのため、交差点などでは信号待ちや車の通過待ちなどが発生し、交通量がトラムの運行に大きく影響しています。
遅すぎ、混みすぎのT1、T3a、T3b
営業中の10路線の中でも、
・T1番線:パリ郊外北部のアニエール=ジェンヌヴィリエ(Asnières-Gennevilliers)とノワジー=ル=セック(Noisy-le-Sec)を東西に結ぶ
・T2番線:パリのポルト・ドゥ・ヴェルサイユ(Porte de Versailles)と郊外北西部のポン・ドゥ・ブゾン(Pont de Bezons)を南北に結ぶ
・T3a番線:パリ市内の北部(パリ右岸:Rive droite)のポン・デュ・ガリアノ(Pont du Garigliano)とポルト・ドゥ・ヴァンセンヌ(Porte de Vincennes)を東西に結ぶ
・T3b番線:パリ市内南部(主にパリ左岸:Rive gauche)のポルト・ドゥ・ヴァンセンヌとポルト・ダニエール( Porte d’Asnières)を東西に結ぶ
の4つの路線は、パリの人々の重要な移動手段となっていて、急激な利用者増加に伴い運行本数を増やしているにも関わらず、供給が追いついておらず、常に混雑している状態が続いています。
また、このうちT1番線、T3a番線、T3b番線は、交通量の多い主要な道路と並走、もしくは車と同じレーンを共有している為、信号待ちや交差点での通過待ち、交通渋滞などにより、実際の移動距離に対して大幅に所要時間がかかることがあり、利用者からは「トラムは遅すぎる」と不満の声が上がっています。
トラム優先へ
この状況に対して、イル=ド=フランス交通機関利用者協会のマルク・ぺリシエ代表は、「我々は、信号よりトラム優先になるよう働きかけなければいけない。トラムが絶対的に優先されなければいけないにも関わらず、いつも必ず遅延が生じている」と述べています。
「トラムは遅い」という汚名を返上することは出来るのか、今後の取り組みに注目が集まっています。
執筆:Daisuke