ノートルダム寺院再建法案、今月10日に国会で審議

2019.05.03

4月15日の火災で甚大な被害を被ったノートルダム寺院(la cathédrale Notre-Dame de Paris)の再建法案が5月2日に準備評議会で決議され、10日に国会で審議されます。

 

「白い貴婦人」5年で再建にむけ法案

ゴシック建築の傑作といわれるノートルダム寺院の火災による大きな損傷は、フランス国民のみならず世界中の人々の悲しみをそそり、すでに再建のための寄付金が世界各国から続々と集まっており、フランス政府は再建についての法案作成に乗り出しました。

マクロン大統領が「5年で完成させる」と宣言した再建プロジェクトは、建築技術的にも資金面でも難関の多い大きなチャレンジとなります。

まず資金面ですが、再建資金の調達に1000EUR(約125000円)までの個人による寄付金の75%を非課税にすること、また寄付金の徴収には1つの公的機関を設立し、さらに資金の使途を管理することが盛り込まれています。

技術面では、工事期間を短縮するため都市計画および環境保護規制に関する特例の設定などが含まれています。

 

前例のない大掛かりな寄付金、使い道にすでに憶測

準備評議会では、提出されたレポートに「すでに8億ユーロ(約995億円)の寄付見込み」と記載されており、「寄付が集まりすぎているのでは」という意見がでています。

これに対し評議会の報告担当アンヌ・ブルニェラ(Anne Brugnera )氏は、「そもそも(現時点では再建工事の方法も決まっておらず)工事にかかる費用の概算すら行われていない中」での金額に対するコメントは、「今後の寄付集めに悪影響を与えるため控えるべきだ」と牽制しています。

ノートルダム寺院再建の寄付金は、国有財産保護財団(La Fondation du Patrimoine)、ノートルダム財団(la Fondation Notre-Dame)、フランス財団(la Fondation de France)および国の機関である、国立博物館センター(Centre des musées nationaux)、そして税務署の5機関で受付けていますが、国有財産保護財団だけですでに2200万ユーロ(約27億3000万円)の個人からの寄付(一人当たり平均100ユーロ=約12500円)が寄せられ、さらに1億6000万ユーロ(約199億円)の寄付が集まる見込みであると報告されています。

巨額の寄付金の使い道に関する憶測を避けるため、フランスの文化大臣フランク・リステール(Franck Riester)は、「集められた寄付金はすべてノートルダム寺院の再建に使われる」と声明を発表しています。

大臣はまた「5年で再建」の野心的な計画に賛同しつつ、1000人以上の各国の文化遺産専門家などからの陳情も踏まえ、「文化遺産の保存を第一に模範的な再建をめざす」と慎重な発言をしています。

 

再建工事のための規制緩和、野党は反発

一方で野党は、今の姿に完成するまでに何百年もかかった寺院の再建を急ぐマクロン大統領の発言に、「都市計画規制緩和を行ってまで工事を急ぐ必要があるのか?」と反発しています。一部の野党議員は、フランス国民の半数が希望する「損傷前と全く同じように再建」を法案の文書に盛り込ませようと試みましたが失敗に終わっています。

報告担当ブルニェラ氏は、専門家の検証結果を待つ間はあらゆる可能性を検討すること、歴史的建造物の専門家の意見を十二分に聞くことを約束しました。

ノートルダム寺院の再建工事への議論はまだ始まったばかりです。

執筆:マダム・カトウ

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