5月8日、アメリカがイラン核合意からの離脱を決定し、更にトランプ大統領はイランに進出する外国企業への制裁も加えると表明しています。そのためフランスでは、エアバスなどイラン進出企業への影響が懸念されています。
欧州エアバス社、イランから170億ユーロの受注
ヨーロッパ大手民間航空機メーカーのエアバス社(Airbus Group SE)は、2016年にイラン航空からA330を38機、A320系を46機、A350系を16機を受注、その総額は170億ユーロ(約1300億円)に上ります。
米ボーイング社も合計80機、総額16,6億ドル(約1100億円)の受注をしており、両者ともすでに納品を開始しています。
アメリカは「世界経済の警察官」とフランス経済・財務大臣が非難
トランプ大統領の「イランとビジネスをする他国企業にも制裁を加える」との発表をうけ、フランス経済・財務大臣(Ministre de l’économie et de finances)ブルーノ・ルメール(Bruno Le Maire)は、「アメリカが世界経済の警察官を演じている」と非難しています。
アメリカ合衆国財務長官、スティーヴン・マヌーチンは「ボーイング社とエアバス社に付与されている、イランに輸出するためのライセンスは無効になる」と表明、すでに同省サイトに「離脱前の契約に関しては、今後90日~180日以内に消滅し、イランとの新規契約は不可能になる」と案内されています。
エアバス社、イランへの輸出が不可能に?
エアバス社は「今までもイランへの経済制裁と、アメリカの輸出制限のルールにのっとって輸出していた」と発表しています。しかしながら、同社は米アラバマ州モービルに工場があり、多くの米国製の部品を使用しているため、実質イランへの航空機の輸出は不可能になります。
とはいえエアバス社は、現在アメリカのユナイテッド航空と、A330neoを50機、140億ユーロ相当の契約交渉に入っています。
イラン進出フランス企業、ルノー、プジョー、トタル社などに打撃
イランにはエアバス社の他、ルノー(Renault :自動車)、プジョー(PSA:自動車)、ATR(航空機)、トタル(Total:ガス・石油)、ヴァンシ(Vinci :建設業)、ボロレ(Bolloré:運送、メディア、通信)など、数多くのフランス企業が進出しています。
トタル社は、中国CNPC社と共同で10億ドルを投じ、イランで世界最大のガス田の開発を計画していました。すでにイラン側との契約は完了していましたが、この計画が実行される可能性はほとんどない、と言われています。
他国に先駆けてイラン自動車市場に進出、1社で30%ものシェアーをもつプジョー社は「EU(欧州連合)の決定に従う」ものの、「ヨーロッパが(アメリカとの)違いを示す」ことを望むと発表しています。
ルノー社も2017年にはイランで16万台以上を販売し、現地シェアーが10%を越えています。また同年8月には、現地自動車メーカーコドロ社との合弁工場を発表するなど、イランへのさらなる投資を進めていました。
同社はまた今回のアメリカ離脱を受け、米国市場シェアの高い「グループ会社日産への制裁も懸念している」と表明しています。
エールフランス、パリーテヘラン線廃止か?
エールフランス航空は、2016年3月に就航したばかりのパリーテヘラン線を廃止することになり、フランス最大のホテルグループ、アコーホテルズ(Accor Hotels)は、2015年にオープンしたばかりのテヘランのホテルを閉鎖せざるを得なくなるかもしれません。
執筆: マダム・加藤