パリにはもう中産階級は住めない?5月3日 議会で市民グループが意見書提出

2018.05.03
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パリ アパート事情

高い家賃、買うには高すぎる不動産、にもかかわらず狭いアパート。パリに住むには経済的な犠牲と、住み心地の大きな妥協を伴います。独身ならまだしも、子供ができるとパリ20区内を出て、郊外に引っ越すのが当たり前という状況になっています。パリの家賃を抑え、中産階級が住める街を取り戻そうと、20人のパリ市民がパネルディスカッショングループを結成し48の意見書をまとめ、本日5月3日、パリ議会に提出しました。

 

パリ不動産価格、前年比+8.6%で過去最高記録を更新

パリの不動産平均価格は2017年末の時点で、1平米当たり9040EUR(約117万円)、前年より8.6%も値上がりし、1年間の価格上昇率の最高記録を更新しました。ちなみに、価格上昇率が過去最高と言われた2012年の1平米当たりの価格は8460EUR(約109万円)でした。2018年は、4月の時点ですでに1平米当たりの価格が9210EUR(約119万円)に達しています。

パリ20区内の価格は、パリ郊外、イル・ド・フランス(Île-de-France)地域圏にあるエッソンヌ県(Essonne)の3.5倍ですが、高値にもかかわらず、不動産売買件数も前年比+17%と大きく伸び、価格の上昇に拍車がかかっています。

 

パリ市内の家賃平均は、フランス全国平均の2.2倍

パリの家賃平均は1平米当たり32EUR(約4160円)、フランス全国平均14EUR(約1820円)の約2.2倍です。フランスの地方都市との格差も大きく、たとえば同じ家賃で、パリだと16平米のアパートしか借りられませんが、フランス第三の都市リヨン(人口50万人)では、43平米のアパートを借りることができます。

 

パリ住民の50%が中産階級

パリの都市計画、発展のための調査分析を目的として、パリ都市計画工房(APUR:Atelier parisien d’urbanisme)という非営利団体が、1967年にパリ議会によって作られました。

このパリ都市計画工房の調査によると、パリの住民の25%が低所得層、25%が高所得層、そして残りの50%が中間所得層、つまり中産階級という内訳になっています。そして、パリ20区内で中産階級が住んでいるのは11区~15区、19区、20区と公表しています。

ここでの中産階級とは、手取り所得が1500EUR(約19万5千円)~3760EUR(約48万9千円)の独身者、3150EUR(約41万円)~7950EUR(約104万円)の4人家族(夫婦と子供2人)を指しています。

 

パリ議会に48の改善案を提出

パリ住民の5割を占める中産階級が、厳しい住宅事情により、徐々にパリに住めなくなってきています。
深刻化するパリの住宅事情に危機感を持った20人のパリ市民が、パネル討論グループを結成し48項目の改善案をまとめた意見書を作成し、5月3日のパリ議会に提出しました。この意見書の内容を採用するかどうか、これから1項目ずつ議会で検討されます。

 

1万件のアパートの増床?

パリ都市計画工房は2017年に、パリにあるアパートのうち、1万1千件余りは増床が可能と公表しています。
たとえば、2015年にパリ13区にある3階建ての低家賃公団住宅は2階増床され、76戸のアパートが増えています。しかしながら、「入居者のいる建物の増床は困難」であり、また「市が民間のアパートの増床に着手することはできない」と、パリ市の住宅担当者、イアン・ブロサ(Ian Brossat)氏は語っています。

 

固定資産税、空アパートのオーナーにペナルティも検討

市民グループはまた、固定資産税の計算方法にアパートが空室だった期間を加味し、空室期間が長いオーナーにペナルティの課税、貸し出しに積極的なアパートのオーナーには段階的に減税することも提案しています。

課税内容や計算方法を変更するには法令の改正が必要となりますが、エラン法(loi Elan)と呼ばれる住宅に関する法案が今年の夏に可決される予定になっているため、法改正案に盛り込むことは不可能ではありません。

しかしながら、提案の中にある「家賃目安規定を守るアパートの持ち主に減税を」という部分については、「法令を守っているだけの人にご褒美を上げることはできない」とブロサ氏はコメントしています。

 

空きオフィスにも課税を

48項目の一つに、借り手のいないオフィスにもペナルティを課税という案もあります。パリ市内には約100万平米分のオフィスの空室があります。空きオフィスに課税することで、オフィスをアパートに変えることを促すことを提案しています。

また、エアビーアンドビー(Airbnb)などに代表される、観光客へのアパートの貸し出しの増加で、通常の賃貸アパートの数が激減していることに対し、貸し出し期間を、現在の120日から35日に変更する案も盛り込まれています。

 

低家賃公団住宅を中産階級にも

フランスでは公団住宅(HLM: Habitation à loyer modéré)は、生活苦の人や低所得層だけを対象にしているというイメージですが、パリ都市計画工房によると、パリ市民の3分の2は公団住宅への応募可能とされています。特に、新築アパートにおいて公団が買い上げた一部の住居は、中間所得層を対象にしています。意見書は、公団住宅への応募が可能な所得のガイドラインを公表をすべきだとしています。

パリの住宅事情の改善の道のりは長いですが、今回の提案のうち果たしていくつが採用されるのでしょうか?2024年のオリンピック開催なども控えており、パリがパリ市民のものになる日は来るのか、今後もパリの住宅事情は注目を集めることになりそうです。

執筆:マダム・カトウ

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