2018年のフランスの地球資源消化日(オーバーシュートデー:Earth Overshoot Day)は5月5日です。
グローバルフットプリントネットワーク(Global Footprints Network)の発表によると、フランスは今年すでに1年で再生できる自然資源を使い果たし、明日5月5日よりマイナスに転じると発表しました。毎年早まるこの日付に、同社および世界自然保護基金(WWF:World Wide Fund for Nature)のフランス支部は警鐘を鳴らしています。
地球資源消化日とは?
グローバルフットプリントネットワークは、毎年世界200カ国で調査をし、各国のエコロジカルフットプリント(Ecological Footprint)を発表しています。
エコロジカルフットプリントとは、「人間活動が環境に与える負荷を、資源の再生産および廃棄物の浄化に必要な面積として示した数値」(出典Wikipedia)です。
つまり、人間一人当たりが生活するために利用する資源(水、食料、電力など)の消費、それにより排出される温室効果ガス、および廃棄物の浄化が環境に与えた負荷を、面積にして計算します。
このエコロジカルフットプリントの数値を利用して、「人類が地球に与えるダメージが、1年に自然資源が再生する量を越えた日」を算出します。こうしてはじき出された日を、地球資源消化日といいます。
地球資源消化日の計算式
地球全体の自然資源再生量÷地球全体のグローバルフットプリント x 365=地球資源消化日
フランス、今年は昨年より3ヶ月早く借金生活
2017年に地球全体が1年分の予算ともいえる自然資源を使い果たしたのは、8月2日でした。つまり、12ヶ月で使うべき予算を8ヶ月で使ってしまったことになります。
これが今年はフランス単体で5月5日に自国の予算を使い果たしてしまい、昨年の世界平均より3ヶ月も早まっています。
フランスは自然の再生能力の1.8倍の負荷を地球に与えており、もし地球全体がフランス人と同じ生活をするなら、地球が2.9個必要になります。
過去の地球資源消化日は、1997年で9月末、1985年で11月末でした。このデータからも、今日いかに自然資源を使い果たす速度が早まっているかが分かります。
2015年パリ協定採択も、減るどころか増加
今年、トランプ政権下のアメリカが離脱を決定して話題になったパリ協定ですが、2015年12月にパリで開催された第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21:United Nations Climate Change Conference)にて、フランス主導の元採択されています。
そのパリ協定の擁護者としても、環境問題に積極的に取り組んでいるはずのフランスですが、自国のエコロジカルフットプリントは、皮肉にも会議の開催された年から、増加の一途をたどっています。
原油安で温室効果ガスの排出量が増加
フランスのエコロジカルフットプリントの内訳は、温室効果ガスが56%、次が農業で20%、森林伐採が11%、放牧業5%、住宅と漁業合わせて4%となっています。
2008年から2015年までの7年間は、エコロジカルフットプリントは減る一方でしたが、これは環境問題への取組みの成果ではなく、ひとえに不景気で工業生産や建設業などが打撃を受けたため、つまりエネルギーの消費量が減ったことによるものと見られています。
2015年に原油安になり、交通やエネルギーが原油への依存を増やしたことに加え、2017年以降の景気回復による建設業の伸びが、温室効果ガスの排出量を増やす原因を作っています。
「借金体質」から抜け出す時はもう来ている
世界自然保護基金フランス支部は、「フランスは環境にやさしい国への転換に、大きく遅れをとっている」と、既存の建物の気密性強化や公共交通の省エネ化などの遅れを厳しく指摘しています。
また代表のパスカル・カンファン(Pascal Canfin)氏は、「フランス政府は今すぐにでも環境問題への戦略を立て、自然資源への借金体質から抜け出すべきだ」とし、「これが企業だったら、毎年収入より支出の方が多いなんてありえないのに」と切実な現状を語っています。
果たしてフランスは、有効な戦略で借金体質から抜け出すことができるでしょうか?
グローバルフットプリントネットワークの公式サイトでは、エコロジカルフットプリントを個人でも計ることができます。
地球の未来のためにぜひお試しください。
執筆:マダム・カトウ